チザルピーノ

チザルピーノ（Cisalpino）

チザルピーノは、1993年から2009年まで存在した鉄道会社、および同社が運行していた国際特急列車の名称です。その名前はイタリア語で「アルプスのこちら側」を意味し、特にイタリア側（南側）を指しています。

概要

チザルピーノは、スイス連邦鉄道（SBB）とイタリアのトレニタリア（Trenitalia）が共同出資して1993年に設立されました。設立当初は、スイスの私鉄であるベルン-レッチュベルク-シンプロン鉄道（BLS）も出資していました。本社はスイスのベルンに置かれていました。

しかし、2009年9月25日、出資母体であるSBBとトレニタリアは、チザルピーノ社の運営を終了し、会社を解散することを発表しました。これは、車両の故障や遅延が多発し、車両保守や輸送サービスの水準が合弁契約の内容を遵守できなくなったためです。2009年12月13日のダイヤ改正をもってチザルピーノ社の列車運行は終了し、その後、スイス・イタリア間の国際列車の運営は、SBBとトレニタリアが引き継ぎました。社員や車両の一部は、両鉄道事業者に分配されました。

列車

列車としての「チザルピーノ」は、1996年に運行を開始したスイス・イタリア間の国際特急列車です。当初は2カ国間のみの運行でしたが、後にドイツのシュトゥットガルトまで直通運転を行うようになりました。時刻表上では、種別名として"CIS"が付与されていました。

この列車は、従来の電気機関車が客車を牽引する方式ではなく、振り子機構を備えた動力分散方式の電車が投入されました。これにより、カーブが多い山岳線区でのスピードアップが図られ、従来のインターシティ（IC）やユーロシティ（EC）よりも所要時間が短縮されました。ゴッタルド峠前後のループ線による山越えや、レマン湖やコモ湖などの美しい景色を楽しめることも、この路線の魅力の一つでした。

2006年12月10日のダイヤ改正では、ドイツのシュトゥットガルトへの乗り入れが廃止され、ドイツ国内からは撤退しました。ドイツ国内の路線は、ICE-Tに置き換えられました。

2006年12月10日ダイヤ改正における運転系統

シャフハウゼン（ドイツとスイスの国境駅）- チューリヒ - ミラノ - フィレンツェ - トリエステ
ジュネーヴ/バーゼル - ミラノ - ヴェネツィア

2009年夏ダイヤ（2009年6月14日～12月12日）における運転系統

種別名は全て"CIS"。

＜シンプロン峠系統＞

ジュネーブ - ミラノ (CIS35/40、1往復/日)
ジュネーブ空港 - ジュネーブ - ミラノ - ヴェネツィア (CIS37/42、1往復/日)
バーゼル - ベルン - ミラノ (CIS51/59/50/56、2往復/日)
バーゼル - ベルン - ミラノ - ヴェネツィア - トリエステ (CIS57/52、1往復/日)

＜ゴッタルド峠系統＞

チューリヒ - ルガーノ - ミラノ - フィレンツェ (CIS13/24、1往復/日)
チューリヒ - ルガーノ - ミラノ (CIS15/19/23/14/18/22、3往復/日)
ルガーノ - ミラノ (CIS17/21/25/151/12/16/20/158、4往復/日)

これらの振り子式電車による運行に加え、チザルピーノ社はスイスとイタリアを結ぶインターシティ（IC）やユーロシティ（EC）も運営していました。これらの列車は、電気機関車（SBBカーゴのRe484形を借用）が客車を牽引する編成でした。2005年12月以降は、シンプロン峠またはゴッタルド峠を越える全ての国際昼行列車（全てのCIS・EC列車）がチザルピーノ社によって運営されていました。

2009年夏ダイヤにおける客車列車の運転系統

種別名は全て"EC"。

＜シンプロン峠系統＞

ジュネーブ - ミラノ (EC125/127/129/120/122/124、3往復/日)

＜ゴッタルド峠系統＞

ベッリンツォーナ - ルガーノ - ミラノ (EC131/171/175/132/172/174/178、3往復/日、EC174は平日運転、EC178は土日曜運転、EC131はビアスカ発)

車両

1996年の運行開始当初から、チザルピーノ社はETR470形ペンドリーノを使用していました。この車両は、アルプス越えのカーブが多い在来線でのスピードアップを図るための振り子式電車で、交直流に対応しており、二等車と食堂車を連結した9両編成でした。

2008年12月14日のダイヤ改正から、ETR470形の後継として、ETR610形（Cisalpino 2）と呼ばれる新型振り子電車がチューリヒ - ミラノ間の系統に投入される予定でしたが、試運転や調整に手間取ったため、営業運転の開始が大幅に遅れました。最終的には、2009年になって本来の性能を落としつつも、順次投入されていきました。

チザルピーノ社による運行の終了

2009年12月13日のダイヤ改正で、チザルピーノ社としての運営は終了しました。同社が所有していたETR470形は、出資していたSBBとトレニタリアに均等に分配され、ETR610形はメーカー保証期間中はチザルピーノ社の所有のまま2社にリースされ、その後譲渡されました。列車種別は"CIS"から"EC"（ユーロシティ）となり、運転系統は3つに集約され、本数も削減されました。この改正で、ETR610形が本格的に営業運転に投入され、客車列車は全て電車に置き換えられました。これにより、全ての列車が振り子式電車での運行となり、シンプロン峠系統の7往復は全てETR610形、ゴッタルド峠系統の7往復は全てETR470形が使用されました。

2009年12月13日ダイヤ改正後の運転系統

＜シンプロン峠系統＞

ジュネーブ - ミラノ - ヴェネツィア (EC37/42、1往復/日)
ジュネーブ - ミラノ (EC35/39/41/32/34/36、3往復/日)
バーゼル - ベルン - ミラノ (EC51/57/59/50/52/56、3往復/日)

＜ゴッタルド峠系統＞

チューリヒ - ルガーノ - ミラノ (EC13/15/17/19/21/23/25/12/14/16/18/20/22/24、7往復/日)

脚注

チザルピーノは、アルプスを越える国際路線で高速化を目指した鉄道会社であった。
振り子式車両の導入により、山岳地帯での走行時間を短縮した。
運営上の問題から解散したが、その路線は後継の事業者に引き継がれた。

関連項目

高速鉄道
振り子式車両
* ペンドリーノ

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