チベット暦

チベット暦は、仏教密教の根本経典である『カーラチャクラ・タントラ（時輪タントラ）』の暦体系に基づいた太陰太陽暦です。この暦は、チベットに『カーラチャクラ・タントラ』が伝来したとされる1027年（火の女兎の年）を起点とする60年周期「ラプチュン」を用いています。1年は、新月から始まる12または13の太陰月で構成され、閏月は約3年ごとに挿入されて季節のずれを調整します。

月と正月

チベット暦には、固有の月名はなく、単に一月から十二月までの番号で表されます。正月は「ロサル（Losar）」と呼ばれ、現在の太陽暦の1月末または2月に相当し、中国暦の春節に似た時期となります。日付は「ティティ」と呼ばれる単位で決まり、欠日や余日が存在します。

曜日

曜日は、西暦と同様に7つの天体に割り当てられており、日々の生活や宗教儀礼において重要な役割を果たしています。

干支

チベット暦には、日本や中国と同様の十干十二支が用いられています。十干は、五行（火・土・金・水・木）に基づき、それぞれ陰陽の区別がありますが、陰陽は兄弟ではなく「男女」で表されます。例えば、ある年が「地の男の龍の年」（戊辰）であれば、次の年は「地の女の蛇の年」（己巳）、その次は「鉄の男の馬の年」（庚午）となります。この陰陽の区別は十二支から予測できるため、省略されることもあります。

60年周期のラプチュンは、「火の兎」の年から始まり、「火の虎」の年で終わります。西暦1027年からの最初の60年を「第1ラプチュン」と呼び、2015年は「第17ラプチュン」の29年目、「木の羊」の年でした。この干支は、日本や中国と同様に占星術にも利用され、個人の運勢や吉凶を占う際に重要な要素となります。

チベット暦は、単なる時間の概念だけでなく、宗教や文化、生活習慣と深く結びついており、チベット社会において重要な役割を果たしています。

参考文献

山口瑞鳳「暦法」『チベット』 上、東京大学出版会、東京、1987年、148-171頁。
張怡蓀 (1993). 「ལོ་ཁམས་དྲུག་ཅུའི་ལེའུ་མིག」「བོད་ཀྱི་ལོ་རྒྱུས་འདས་པའི་ལོ་ཚིགས་དང་སྦྱར་ཏེ་བསྒྲིགས་པའི་ལེའུ་མིག」『蔵漢大辞典』, pp.3195-3291. 北京: 民族出版社
Norbu, Thubten & Harrer, Heinrich (1960). Tibet is my Country. London: Readers Union, Rupert Hart-Davis
Shakabpa, Tsepon W.D. (1967). Tibet: A Political History. New Haven and London: Yale University Press

外部リンク

暦の蔵（東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・星研究室）

脚注

関連項目

中国暦
* 太陽暦

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