チャドクガ

チャドクガについて

チャドクガ（茶毒蛾）は、チョウ目ドクガ科に属する昆虫で、日本各地に生息しています。特に、ツバキ科の植物を食害することで知られており、その毒針毛による皮膚炎は、多くの方を悩ませる原因となっています。

生態

チャドクガは、年に2回発生し、卵で冬を越します。幼虫は、4月から10月にかけて出現し、淡黄褐色をしています。成長すると25mm程度になり、チャノキ、ツバキ、サザンカなどの葉を食害します。若齢幼虫は、集団で葉を食べる習性があり、一列に並んで移動する姿が見られることがあります。この時、頭を左右に振る行動は、天敵を威嚇するためや、毒針毛を風に乗せて攻撃するためと考えられていますが、詳しい理由は解明されていません。成長すると分散し、食害範囲を広げます。成虫は、昼間は木の幹などに静止しており、ツバキの葉裏などに産卵します。卵塊は、成虫の体毛で覆われています。天敵はスズメバチ類です。

毒針毛とかぶれ

チャドクガの毒性は、体毛ではなく、幼虫の体にある0.1-0.2mmの毒針毛に含まれるプロテアーゼ、エステラーゼ、ヒスタミンなどの物質によって引き起こされます。この毒針毛は非常に抜けやすく、また表面に小さなトゲがあるため、皮膚に付着すると抜けにくい構造になっています。幼虫だけでなく、繭、成虫、卵塊、さらには1齢幼虫にも付着し、成長過程すべてで受け継がれます。チャドクガは、自ら人を刺すのではなく、触れることで被害をもたらします。一度被害にあうと、アレルギー反応を起こしやすくなり、二度目以降は症状が重くなることがあります。毒針毛は、衣服の隙間から侵入したり、風によって飛散したりするため、直接触れなくても被害にあう可能性があります。また、死骸にも毒針毛は残るため、注意が必要です。

症状

チャドクガによる症状は、アレルギー反応であるため、個人差があります。接触後、2～3時間で赤く腫れ上がり、激しい痒みを伴います。症状は、一度接触すると抗体が形成されるため、2回目以降はより重くなる傾向があります。痒みから掻きむしると、毒針毛が皮膚に深く刺さり、炎症が広がります。患部は、腕全体や体全体に広がることもあり、予防が難しいです。重症化すると、神経毒による激しい痒みで眠れなくなったり、発熱、めまい、嘔吐、痙攣などの症状を引き起こすこともあります。放置すると、長期にわたり痒みが続くため、速やかに皮膚科医の診察を受ける必要があります。体質によっては、接触皮膚炎を併発したり、毒針毛が深部に達すると化[[膿]]し、水疱が生じることもあります。この場合、患部は一時的に壊死状態になり、傷跡が残る可能性もあります。

治療

チャドクガによる痒みは、長期にわたり、厄介なものです。もし触れてしまったら、まず衣服についた毒針毛をガムテープなどで丁寧に除去します。洗濯機での水洗いは、毒針毛を拡散させるため避け、50℃以上のお湯で洗濯するか、スチームアイロンをかけると効果的です。皮膚に付着した場合は、セロテープで毒針毛を除去し、石鹸を泡立てて流水で洗い流します。その後、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を塗ります。市販の痒み止めは、症状を悪化させることがあるため、使用を控えます。症状が重い場合は、皮膚科医を受診し、処方箋医薬品を使用するのが良いでしょう。傷跡には、ヘパリン類似物質が有効です。

駆除

チャドクガは、ツバキやサザンカなど、身近な園芸植物に発生しやすく、子供やペットが被害にあうこともあります。予防のためには、早期に剪定を行い、風通しを良くすることが重要です。卵塊を発見したら葉ごと切除します。幼虫が若いうちは、葉裏に群生しているため発見が難しいですが、食害された葉が白く透けてくることで気づくことが多いです。この時期に枝ごと切除すると効果的です。拡散を防ぐ固着剤や、農薬（アセフェート）の散布も有効です。成長して拡散してしまった場合は、殺虫剤（フェニトロチオン）で駆除します。

脚注

参考文献

一色周知監修,六浦晃(他)著『原色日本蛾類幼虫図鑑(上)』保育社、1965年。
江崎悌三,一色周知,六浦晃(他)著『原色日本蛾類図鑑(下) 改訂新版』保育社、1971年。

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