虫刺症

虫刺症について

虫刺症とは、昆虫類を含む虫に刺されたり、咬まれたりすることで生じる皮膚の傷や炎症を指します。一般的に「虫刺され」として知られていますが、医学的には刺咬症や蜂刺症といった名称も用いられます。本記事では、刺された場合だけでなく、咬まれた場合も含めて解説します。

一般的な対処法

蚊、ブヨ、ダニ、アブなどに刺された場合や、毛虫、毒蛾にかぶれた場合は、以下の対処法が有効です。

ステロイド外用剤: 軟膏やクリームを塗布することで、炎症やかゆみを抑えます。
局所冷却: 冷たいタオルなどで患部を冷やすことで、かゆみや痛みを和らげます。
重症の場合: ステロイドの内服や注射が必要になることもあります。

飛翔する昆虫は体温が高く、毒が熱で失活しにくい一方、ムカデや毛虫など飛翔しない昆虫は体温が低く、毒が熱で失活しやすいという特徴があります。

発赤・熱感のある場合の処置

受傷後、早期に以下の処置を行うことが推奨されます。

1. 外用ステロイドと亜鉛華軟膏の混合: ベタメタゾン（リンデロンV軟膏など）と亜鉛華軟膏を同量混合し、患部に厚めに塗布します。
2. ラップによる被覆: ポリ塩化ビニリデンラップ（食品用ラップ）で患部を覆います。
3. 冷却: ラップの上から、冷水や氷で冷やしたタオルで20分ほど冷やします。

この方法により、かゆみが軽減し、腫れも改善されます。また、患部をラップで覆うことで、掻き壊しによる二次感染（とびひなど）のリスクを減らすことができます。

蜂刺傷

蜂に刺された場合、最も注意すべきはアナフィラキシーショックです。これは全身にアレルギー反応が起こる重篤な状態で、死に至ることもあります。日本では年間20～70人の方が蜂刺傷で亡くなっています。

アナフィラキシーショックの症状

全身の蕁麻疹
呼吸困難
気分不快
冷や汗
めまい

これらの症状が現れた場合は、直ちに119番に電話し救急車を要請してください。ショック症状は刺傷後数分で始まることもあるため、迅速な対応が重要です。

その他の症状

刺された場所が1～2日後に腫れたり痛んだりすることがありますが、これは通常の皮膚炎に準じた治療（ステロイド薬の外用・内服・注射）で対処できます。

ムカデ咬傷

ムカデの毒も蜂毒と同様にアレルギー反応を引き起こす可能性があります。ムカデに咬まれた場合、激しい痛みと局所の腫れを伴います。傷跡はステープラーの針で空けたような形になるのが特徴です。

対処法

ステロイド外用、内服、注射: 蜂刺傷と同様の処置が有効です。
抗菌薬: 傷口から感染が広がる可能性があるため、抗菌薬の内服も考慮されます。

温熱療法の有効性

ムカデ毒は温熱によって変性・失活するため、温めることで症状が軽減することがあります。その後、冷却することで炎症が鎮静し、痛みが和らぎます。

サソリ刺傷

サソリによる刺傷は、特に海外で注意が必要です。メキシコでは年間2000人もの方がサソリ刺傷で亡くなっています。サソリ毒は神経系に作用し、筋肉の痙攣や呼吸困難を引き起こすことがあります。

治療法

サソリ毒に対しては、抗サソリ毒血清が有効です。

ダニ刺傷

ダニに刺されても、多くの場合、局所的な症状は軽度ですが、ツツガムシ病、日本紅斑熱、ライム病などの感染症に注意が必要です。ダニが皮膚に食い込んでいる場合は、無理に自分で抜かず、医療機関を受診してください。ダニアレルギーの方は、全身に発疹が出ることがあります。

蚊刺傷

蚊に刺された場合は、軽度の炎症で済むことが多いですが、日本脳炎などの感染症に注意が必要です。熱帯地域へ渡航する際は、マラリア、ウエストナイル熱、デング熱、ジカ熱にも注意が必要です。

まとめ

虫刺症は身近なトラブルですが、症状によっては重篤な状態に陥ることもあります。正しい知識と適切な対処法を身につけ、安全な生活を送りましょう。

関連項目

防虫剤
感染症
皮膚科学
外科学
外傷
動物咬傷
クラゲ刺傷
トコジラミ

外部リンク

虫さされ - 日本皮膚科学会
虫刺傷 - MSDマニュアル

もう一度検索