チン民族防衛隊

チン民族防衛隊（CNDF）

チン民族防衛隊（Chin National Defence Force、略称：CNDF）は、ミャンマーのチン族を主体とする武装勢力の一つです。チン民族機構（Chin National Organisation、略称：CNO）の軍事組織としての役割を担っています。2021年2月に発生した軍事クーデターに対し、チン州の抵抗運動の一環として誕生しました。

設立と活動の初期

CNDFおよびその親組織であるCNOは、2021年4月13日に正式に発足しました。この組織は、クーデター勃発後に、特にファラム郡区、カレ郡区、そしてカボー郡区といった地域社会の住民が、国外に在住するチン族移民コミュニティと連携して設立したものです。

設立後の2021年8月、CNDFはチン州内で活動する他の17の抵抗組織と共に、チンランド共同防衛委員会（CJDC）を結成しました。CJDCはチン族系武装勢力の連携組織として機能しましたが、2023年12月に解散するまで、CNDFはその一員として活動を続けました。

軍事作戦の展開

CNDFはミャンマー軍（タッマドー）やその関連施設に対する軍事行動を積極的に行ってきました。2022年11月には、マウンテンイーグル防衛隊と協力し、ファラム郡区に位置するミャンマー軍の駐屯地に対し、ドローンを用いた攻撃を実施しています。さらに、2023年4月には、ファラム郡区内の警察署とミャンマー軍のキャンプを武力で制圧下に置くことに成功しました。また、同年の11月には、国民防衛隊（PDF）、カチン独立軍（KIA）、アラカン軍（AA）といった他の有力な武装勢力と連携し、ザガイン地方域内の3つの町を共同で掌握する作戦にも参加しました。

政治的立場と新たな同盟

2023年12月に開催されたチンランド評議会の第一回会議において、CNO/CNDFは、CDFミンダッ、PDFゾーランド、CDFカンペレッといった他のいくつかのチン族系武装組織と共に会議への参加を見送りました。これを受けて、CNO/CNDFは、参加しなかった勢力を中心に、PDFゾーランド、CDFミンダッ、そしてマーラランド防衛隊と共に、新たな連携枠組みであるチン兄弟同盟を形成しました。その後、2024年3月にはカンペレッCDFもこの同盟に加わっています。CNO/CNDFは、チンランド評議会がチン民族戦線（CNF）と国民民主連盟（NLD）の影響下にあり、真の民主主義基準を満たしていないと批判する立場を取っています。

ファラム制圧作戦

チン民族防衛隊は、チン族抵抗運動における最も重要な軍事作戦の一つであるファラム攻勢において中心的な役割を担いました。2024年11月9日、CNDFは同盟勢力と共に、チン州の州都機能を担うファラム市に対する大規模な攻撃を開始しました。この作戦は「イェルサレム作戦」と名付けられ、初期段階でミャンマー軍第268軽歩兵大隊基地を包囲しました。この攻勢は激しい抵抗に遭い、開始から最初の6週間でCNDFおよびその同盟軍は約50名の戦死者を出すなど、多大な犠牲を伴うものでした。しかし、5ヶ月に及ぶ激戦の末、2025年4月7日、CNDFと同盟軍はついにミャンマー軍の第268大隊基地を占領し、これによりファラム市全域の制圧を達成しました。ファラムの制圧は戦略的に重要であり、これによりカレとハカを結ぶ陸路が分断されることとなり、ミャンマー軍にとって大きな打撃となりました。

組織構造

チン民族防衛隊は、複数の旅団で構成される組織構造を持っています。全体として4個の旅団が編成されており、そのうち3個旅団がチン州内の様々な地域で活動しています。残りの1個旅団、すなわち第4旅団は、特にチンドウィン川上流域にあたるファラム郡区とカレ郡区を管轄区域としています。各旅団はさらに3個大隊で構成され、それぞれの担当地域での軍事活動や防御任務を遂行しています。

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