ツルサイカチ属

ツルサイカチ属 (Dalbergia) とは

ツルサイカチ属（ダルベルギア属、学名: Dalbergia）は、マメ亜科に属する植物のグループです。低木または木本性のつる植物として存在し、熱帯アメリカ、アフリカ、マダガスカル、アジア南部など、世界中の熱帯・亜熱帯地域に広く分布しています。

特徴

ツルサイカチ属は、その種数において見解が分かれており、専門家によって100種から600種以上とされています。いずれにしても、多様な種を含む大きな属であることは間違いありません。

特に重要なのは、木材としての利用価値が高い種が多いことです。これらの木材は装飾的な美しさや芳香を持つことで知られ、家具や楽器などの製造に利用されてきました。しかし、その人気ゆえに過剰な伐採が進み、一部の種は絶滅の危機に瀕しています。

ワシントン条約による保護

ツルサイカチ属の種は、その保護の必要性からワシントン条約（CITES）によって規制されています。中でも、ダルベルギア・ニグラ（ブラジリアン・ローズウッド）は附属書Iに記載され、国際取引が厳しく制限されています。その他の種は附属書IIに記載され、取引には許可が必要となっています。

名前

属名の Dalbergia は、スウェーデンの植物学者ニコラス・ダールベルク（Nicholas Dalberg, 1736–1820）に献名されたものです。

用途

木材利用

ツルサイカチ属の多くの種は、ローズウッドに代表されるように、重要な木材資源として利用されてきました。ローズウッドはその美しい色合いと香りの良さから、高級家具や楽器、装飾品などに用いられます。しかし、ローズウッドと呼ばれる木材は、ツルサイカチ属全体から見るとごく一部です。

食草・食樹としての利用

ツルサイカチ属の植物は、チョウ目の幼虫の食草または食樹としても利用されています。特定の種は、特定のチョウの幼虫によって選択的に食べられることがあります。

主な種

高く評価されるローズウッド

ブラジリアン・ローズウッド (Dalbergia nigra): バイーア・ローズウッド、リオ・ローズウッド、パリサンデル・デ・リオ・グランデ、ジャカランダなどの別名を持ちます。しかし、過去の過剰伐採により、現在はワシントン条約の保護対象となっています。
*マルバシタン (Dalbergia latifolia): イースト・インディアン・ローズウッド、ソノケリンとしても知られ、ブラジリアン・ローズウッドに次いで評価の高いローズウッドです。

その他の有名な木材

*チューリップウッド (Dalbergia decipularis): 赤やサーモンピンクの縞模様が特徴で、中張りベニヤなどに利用されます。
*キングウッド (Dalbergia cearensis): 黒っぽい縞模様が入った紫色の材を持ち、チューリップウッドと同様に利用されます。
*ココボロ (Dalbergia retusa): 中央アメリカ原産で、切った直後は鮮やかなオレンジレッドですが、時間が経つにつれて落ち着いた色合いに変化します。
*シッソノキ（インディアン・ローズウッド） (Dalbergia sissoo): 工具の柄などに用いられ、インドの土産物店ではローズウッドと偽って着色されたものが販売されることがあります。
*アフリカン・ブラックウッド (Dalbergia melanoxylon): 極めて黒い木で、木管楽器の製造に用いられます。

その他の経済的に重要な種

*マダガスカル・ローズウッド (Dalbergia baroni)
*シタン (Dalbergia cochinchinensis)*

まとめ

ツルサイカチ属は、貴重な木材資源として人々に利用される一方で、過剰な伐採によって絶滅の危機に瀕している種も存在します。持続可能な利用と保護の両立が、今後の重要な課題となっています。

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