テアニン

テアニン（L-Theanine）とは

テアニンは、お茶に豊富に含まれるアミノ酸の一種です。具体的には、グルタミンのアミド部分が変化した化合物であり、茶の旨味成分として知られています。乾燥茶葉には1～2％程度含まれており、特に上質な緑茶に多く含まれています。

テアニンの特徴

特異な存在: 植物ではチャノキとその近縁種、そして特定のキノコにしか存在しない珍しいアミノ酸です。
旨味成分: お茶の独特な旨味を形成する重要な要素です。
窒素の貯蔵形態: チャノキが吸収した窒素を、安全な形で蓄積するために合成する物質と考えられています。
光による変化: 茶葉内でテアニンは根で生成され、葉に運ばれますが、日光に当たるとカテキンに変化します。そのため、玉露や抹茶の原料となる茶葉は、収穫前に日光を遮ることでテアニンの含有量を増やしています。

テアニンの体内動態と生理作用

テアニンを経口摂取すると、小腸から吸収され、血液脳関門を通過して脳へ直接作用します。このため、精神面に影響を与えるとともに、脳以外でも様々な生理作用を発揮します。

生理作用

リラックス効果: 摂取後30～40分で脳波にα波が現れ、リラックス効果が確認されています。不安を感じやすい人にも有効です。
抗ストレス作用: ストレスによる心拍数の変動や主観的なストレス感を抑制する効果があります。
血圧降下作用: リラックス効果に伴い、血圧を下げる作用も報告されています。
睡眠の質の改善: 中途覚醒の減少や、起床時の爽快感、熟眠感、疲労回復感を改善する効果が期待できます。
月経前症候群（PMS）の緩和: PMS時のイライラや憂鬱、集中力低下などの精神的な症状を改善すると報告されています。
神経保護作用: 動物実験では、神経系の変性や衰退を防止する効果や、脳梗塞による記憶障害を予防する効果が示唆されています。

作用機序

テアニンは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸と構造が似ていますが、グルタミン酸受容体との親和性は低く、むしろ抑制性の神経伝達物質であるGABAを増加させるように働きます。また、脳内のドーパミンの濃度を上昇させる作用も確認されています。

安全性

テアニンは、ラットを用いた研究で、高濃度での摂取でも無害であることが確認されています。アメリカ食品医薬品局 (FDA) は、テアニンを食品添加物としてGRAS (一般に安全と認められる) に分類しています。

薬物相互作用

テアニンは、カフェインと同時に摂取することで、認知機能や気分を改善する相乗効果が期待できます。また、統合失調症の治療薬との併用で、症状の軽減が報告されています。

研究

テアニンには、免疫機能を向上させる可能性も示唆されています。ガンマ・デルタT細胞の機能を高め、感染に対する免疫反応を助けると考えられています。

歴史

テアニンは1950年に日本の研究者によって玉露から発見され、1964年に食品添加物として指定されました。名前の由来は、お茶の学名である“Thea sinensis”にちなんでいます。

利用

テアニンは、菓子類や飲料、サプリメントなど、幅広い食品に利用されています。緑茶の呈味改善剤としても使用されており、様々な食品の風味を改善する効果があります。

サプリメント

海外では、テアニン配合の飲料が販売されており、集中力向上やリラックス効果を謳っています。サプリメントの原料としては、日本の太陽化学が製造するサンテアニンがよく用いられています。

まとめ

テアニンは、お茶に含まれるアミノ酸であり、リラックス効果や睡眠の質の改善など、様々な健康効果が期待できる成分です。安全性も高く、食品やサプリメントとして手軽に摂取できるため、日々の健康維持に役立ててみてはいかがでしょうか。

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