テイカカズラ

テイカカズラ（定家葛）

テイカカズラ（学名: Trachelospermum asiaticum）は、キョウチクトウ科テイカカズラ属に分類されるつる性の常緑低木です。別名としてマサキノカズラとも呼ばれます。この植物は有毒性を持つことで知られています。

名前と伝説

和名の由来は、能『定家』に語られる伝説に遡ります。式子内親王を深く愛した藤原定家が、亡くなった後も彼女を忘れられず、テイカカズラに生まれ変わって墓に絡みついたという物語に基づいています。

分布と生育環境

テイカカズラは、朝鮮半島と日本（本州、四国、九州）の温暖な地域に分布しています。山野や林で自生し、岩や木を這い上がるように生育するほか、庭木としても栽培されています。

形態と生態

テイカカズラは常緑のつる性木本であり、茎から気根を出して他のものに固着します。茎の表面には多数の気根の跡が残り、樹皮には多くの突起が見られます。成長すると、枝先は高木の樹冠に達し、つるの直径は4cmに達することもあります。

成木になると、樹皮から離れて枝を空中に伸ばし、葉は大きく黄緑色になります。葉は対生し、長さ3〜8cmの楕円形で、質感は様々です。幼木の方が革質で光沢があり、地面を這いまわる間は深緑色で、葉脈に沿って白い斑紋が入ることがあります。古い葉は、春先の新芽が出る頃から初夏にかけて、橙色や赤色に色づき散っていきます。新芽にはピンク色や白色、黄金色の斑入りの園芸品種も存在します。茎や葉を切ると白い乳液が出ますが、これには毒性があります。

花期は5〜6月で、枝先や上部の葉腋にまばらな集散花序をつけ、花を咲かせます。花は房状の花序が垂れ下がったところにつき、花冠の基部は筒状で、先端は5裂して広がり、花径は20〜30mmほどです。それぞれの裂片は先端が丸まった三角形で、わずかにねじれており、全体としてプロペラのような形状をしています。花は最初は白色ですが、次第に淡黄色になり、ジャスミンに似た甘い芳香を放ちます。

果期は10月で、長さ約20cmの細長い袋果が2個対になってぶら下がり、熟すと縦に裂けて種子を散布します。種子には非常に長い白い綿毛があり、風に乗って遠くまで運ばれます。

人間との関わり

テイカカズラは観賞用としても栽培され、庭木や垣根、盆栽として利用されます。栽培品種には、斑入りのハツユキカズラや、葉が赤みを帯びたゴシキカズラなどがあります。

夏に採取される茎葉には解熱効果があるとも言われていますが、専門家以外が扱うには危険が伴うため、薬用としての利用は避け、花を観賞するにとどめるのが賢明です。

古典に登場する「まさきのかづら」「まさきづら」は、本種を指すと言われています。

近縁種

チョウジカズラ (Trachelospermum asiaticum var. majus)
ヒメテイカカズラ (Trachelospermum gracilipes)
オキナワテイカカズラ（リュウキュウテイカカズラ） (Trachelospermum gracilipes var. liukiuense) - 九州南部以南、琉球列島に分布
トウキョウチクトウ (Trachelospermum jasminoides)
ケテイカカズラ (Trachelospermum jasminoides var. pubescens)
ニシキケテイカカズラ (Trachelospermum jasminoides var. pubescens f. variegatum)

類似の植物

テイカカズラは、特に木に這い登った際の姿が、ニシキギ科のつる植物であるツルマサキによく似ており、区別が難しい場合があります。しかし、テイカカズラの茎が灰色であるのに対し、ツルマサキの茎は緑色であるため、この点で区別できます。また、キョウチクトウアブラムシが寄生することがあり、このアブラムシはキョウチクトウと同じ鮮やかな黄色をしているため、寄生の有無によっても識別が可能です。その他、サカキカズラ (Anodendron affine) などもよく似ています。

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