テオドシウス・ティング

テオドシウス・スティーヴンス・ティング：教育と医療に尽力した宣教師

テオドシウス・スティーヴンス・ティング（Theodosius Stevens Tyng、1849年11月26日 - 1927年10月19日）は、アメリカ聖公会の宣教師であり、教育者、建築家としても活躍した人物です。アメリカでの伝道活動を経て日本に派遣され、立教大学の前身の一つである聖テモテ学校の再興と、大阪・英和学舎の設立に尽力しました。彼の熱心な指導により、優れた聖職者、実業家、教育者が数多く輩出され、日本の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと来日

1849年、アメリカ・オハイオ州コロンバスに生まれたティングは、ケニオン大学、コロンビア大学で学び、その後ケンブリッジ神学校に進みました。神学校卒業後、約5年間伝道活動を行い、1878年（明治11年）6月11日、米国[[聖公会]]海外委員会によって宣教師に任命されました。同年8月3日、妻と共にニューヨークからイギリス経由で日本へ向かい、11月25日に東京に到着。翌月12月13日には、任地である大阪に到着し、アーサー・ラザフォード・モリスに迎えられました。

聖テモテ学校の再興と英和学舎の創設

チャニング・ウィリアムズから、1876年（明治9年）に廃校となっていた聖テモテ学校（立教大学の前身の一つ）の再興を託されたティングは、1879年（明治12年）10月に学校を再開。新たに上福島村（現在の大阪市北区）に「英和学舎」として開校しました。学校は4年制で、校長はモリスが務めましたが、教務はティングが担当しました。米国[[聖公会]]宣教医のヘンリー・ラニングも学校創設に携わり、ティングやモリスと共に教鞭をとりました。

当時、授業料は無料でしたが、生徒数の増加に伴い、月30銭を徴収することになりました。厳しい状況下での学校再建でしたが、ティングは忍耐と誠意を持って学生を指導し、学校を立て直しました。英和学舎は、官立大阪高等中学校（後の旧制第三高等学校、現・京都大学）や同志社と並び、関西の三大校と称されるまでになりました。教員には、英文学の第一人者である清水泰次郎、洋行帰りの山中幸平、後に立教中学校初代校長となる左乙女豊秋らが名を連ね、英語教育では特に高い評価を得ていました。

ティングの感化によって、多くの優れた人材が育ちましたが、その中には、後に立教大学の初代学長となる元田作之進もいました。元田もまた、ティングの出身校であるコロンビア大学で学んでいます。その他、日本[[聖公会]]第2代邦人主教となる名出保太郎、南海電気鉄道株式会社社長を務めた大塚惟明、昆虫学者の松村松年なども英和学舎で学びました。

ミッションの繁栄と聖バルナバ病院の建設

ティングの精力的な管理の下、英和学舎は1880年（明治13年）5月には生徒数が50人近くまで増加しました。また、同時期の大阪の米国[[聖公会]]ミッションも順調に発展し、女子校である照暗女学校（のちの平安女学院）も繁栄しました。ヘンリー・ラニング医師の医療活動も拡大する中で、病院建設の必要性が強く提唱され、ニューヨーク教区の女性たちの協力によって、必要な資金が調達されました。

1881年（明治14年）、英和学舎は川口居留地21番に移転し、校舎が新築されました。1882年（明治15年）には、東京・築地の立教学校校長であったジェームズ・ガーディナーの設計により、英和学舎の付属礼拝堂である聖テモテ教会（現・川口基督教会）の建設が始まりました。この際、ティングはガーディナーから建築技術を学びました。

同年5月7日、聖テモテ教会礼拝堂の落成を祝う祈祷会が行われました。また、同年には、日本初のシェイクスピア劇翻訳者となる河島敬蔵が、英和学舎の教授に就任しました。さらに、ティングは聖テモテ教会の建設で培った建築技術を生かし、大阪・川口居留地内で初となる病院、聖バルナバ病院の設計・建設監督を担当しました。1883年（明治16年）9月にラニングを院長として開設された病院には、当時最先端の医療器具が備えられました。さらに、ティングは時間を見つけては、144曲の讃美歌を収録した讃美歌集も作成しました。

日本におけるカレッジ創設と立教大学校の創設

1859年（安政6年）のミッション開設当初から、米国[[聖公会]]では日本での高等教育機関（カレッジ）設立を重要課題としていました。1881年（明治14年）の在日米国[[聖公会]]宣教師会議で、ティングは日本人学生と日々接する宣教師と外国人教授を配し、東京大学の文学コースに匹敵する学習課程を持つカレッジ設立の必要性を訴えました。この提案は出席者の賛同を得て、カレッジの設立が決定しました。こうして、1883年（明治16年）に、東京・築地に米国式カレッジとして、人文・社会科学と自然科学の多彩な科目を持つ立教大学校が設立されました。

大阪での活動と英和学舎の学生運動

1884年（明治17年）のミッション報告では、大阪の聖体拝領者数がほぼ倍増、英和学舎には50人以上、照暗女学校には34人の生徒が在籍するなど、順調な活動状況が報告されました。また、聖バルナバ病院も4,073件の診療と47件の入院患者を治療しました。1885年（明治18年）には、駐在する米国[[聖公会]]ミッションの職員は減少したものの、照暗女学校の生徒数は増加し、淡路町チャペルの学校も繁栄しました。洗礼者数、堅信礼者数、聖餐者数も増加しました。

しかし、1886年（明治19年）3月には英和学舎で学生運動が発生し、学校騒動に発展しました。学生たちは、官立学校と比較して授業時間が少ないことや、外国人が生徒を軽視していると感じていました。小林彦五郎（後の立教女学校校長）や元田作之進らが中心となり、学校に改善を求めましたが、要求は受け入れられず、38名の学生が転校、英和学舎は一時閉鎖を余儀なくされました。

一時帰国と英和学舎の閉校

1886年（明治19年）3月4日、ティング夫人と子供たちは一時帰国しました。ティングは、五條市での活動や学生運動の対応のため、6月まで出発を延期しました。同年11月には、ヘンリー・ペイジ牧師が大阪に派遣され、ティングの不在中の業務を担当しました。1887年（明治20年）2月、日本[[聖公会]]が成立すると、英米ミッションの教会と学校が整理されることになり、同年3月、大阪・英和学舎は東京の立教大学校と合併し、閉校しました。モリニュー夫人の病気による帰国命令と、管理者の不在も合併の背景にありました。奨学金を受けていた生徒は、東京の立教大学校に移りました。同年10月、ティングは家族と共に再来日しました。

関西での活動と京都での伝道

1887年には、上流階級の女性たちへのキリスト教普及のため、大阪婦人会が設立され、ラニング夫人の協力を得て活動が展開されました。同年には、奈良に日本人信徒が伝道局の援助なしに初めて教会を建設しました。また、メイルズ女史による聖書教育も大きな成果を上げました。聖バルナバ病院と東京の診療所では、医療活動が大幅に増加しました。

1888年（明治21年）には、大阪の聖テモテ会、聖カンファ会、聖パウロ会の３つの教会が自立し、新しい教会「聖ヨハネ教会」も設立されました。照暗女学校の生徒数も増加し、大阪婦人会の活動も順調に進みました。聖バルナバ病院では、外来患者数と入院患者数が増え続け、奈良の英和学校も繁栄しました。

1889年（明治22年）には、敦賀で伝道が始まり、その後、京都でも布教活動が開始されました。11月16日には、京都で最初の聖公会講義所が開設され、ティングと高橋敬が布教活動を開始しました。また、1890年（明治23年）には、円山公園でキリスト教説教会を開催しましたが、三条と五条の講義所では、しばしば説教妨害がありました。

関東、東京での活動

1891年（明治24年）頃には、宇都宮で伝道を開始しました。1892年（明治25年）7月には、ティングはジェームズ・ガーディナーの後任として立教学校（現・立教大学）の校長に就任しました。1896年（明治29年）4月には、立教専修学校の初代校長と立教学校総理に就任しました。また、1897年（明治30年）9月には、東京英語専修学校の初代校長にも就任しました。

晩年

ティングは、教育と医療の分野で多大な貢献を果たし、日本の発展に大きく貢献しました。彼の熱心な指導と献身的な活動は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

脚注

注釈

出典

関連項目
立教大学
平安女学院
聖バルナバ病院
川口基督教会
奈良英和学校

外部リンク
歴代代表者（総長・学長・校長） | 立教大学
* Theodosius Steven Tyng (1849-1927) - Find a Grave Memorial

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