英和学舎

英和学舎：立教大学の源流を辿る

英和学舎は、明治時代に米国[[聖公会]]によって大阪に設立された教育機関であり、現在の立教大学へと繋がる重要なルーツの一つです。その歴史は、宣教師たちの熱意と、当時の日本における西洋教育への強い関心によって彩られています。短い期間ではありましたが、その教育内容は当時としては非常に高度であり、多くの著名な人物を輩出したことで知られています。

創成期：宣教師たちの情熱

1859年、米国[[聖公会]]の宣教師チャニング・ウィリアムズが来日し、長崎で私塾を開設したことが、英和学舎の源流となります。その後、ウィリアムズは一時帰国を経て、1868年に再び中国での活動を開始しますが、同年11月には大阪を新たな活動拠点とすることを決意しました。1869年7月には、大阪川口の外国人居留地近くに小礼拝堂を開設し、英語礼拝と英語教育を始めました。

1870年1月には、礼拝堂に加え英学講義所を開設し、これが後の英和学舎へと発展していきます。同年12月には、ウィリアムズの呼びかけに応じたアーサー・ラザフォード・モリスが宣教師として来日し、1872年2月には、二人の手によって私塾が正式に開設されました。しかし、当時の日本ではキリスト教が禁教下にあったため、私塾は開設からわずか4ヶ月で閉鎖されてしまいます。

聖テモテ学校の誕生と再興

1873年2月、岩倉使節団の活動を背景に、キリスト教禁制の高札が撤去されると、ウィリアムズとモリスは閉鎖されていた私塾を改称し、聖テモテ学校（St. Timothy's School）を開校しました。初代校長にはモリスが就任しました。しかし、ウィリアムズが東京に拠点を移すと、聖テモテ学校は1876年に一旦閉校となります。

1879年、テオドシウス・ティングが来日すると、モリスの協力のもと、聖テモテ学校は英和学舎として再興されました。この時、入学希望者が非常に多く、英語の初心者には来学を促すほどでした。学校は4年制とされ、生徒数の増加に伴い、それまで無料だった授業料が月30銭徴収されるようになりました。

教育内容と特徴

英和学舎では、英語、数学、漢学といった基礎科目に加え、天文学、生理学、論理学、歴史学、本草学など、当時としては高度な学問が教授されました。特に、歴史学、植物学、生理学などの学科は全て英語で行われたのが特徴です。英和学舎は、官立大阪高等中学校、京都の同志社と並び、関西の三大校と称されるほどの評価を得ていました。また、当時の私立学校の隆盛期において、英和学舎は東京の慶應義塾、京都の同志社と並び称されるほどの隆盛を誇りました。

教員陣には、校長のティングやモリス、ラニングといった有力な宣教師に加え、清水泰次郎、山中幸徳、左乙女豊秋など、当時著名な英文学者や教育者が名を連ねていました。これらの教師陣によって、英和学舎は特に英語教育において、他の学校を圧倒するほどの高いレベルを誇っていました。

学生たちは、当時自由民権運動が盛んな時代背景も相まって活発で、校内での演説会や討論会はいつも活気に満ちていました。また、徽章や制帽、制服も規定され、学生たちは自らの学校に誇りを持っていました。

学生運動と閉校、そして合併

1886年、英和学舎では学生運動が発生し、一時閉校の憂き目を見ます。学生たちは、授業時間の問題や外国人教師に対する不満を訴え、学校側に改善を求めましたが、要求が受け入れられなかったため、多くの学生が転校し、学校運営が困難となりました。この学生運動が、翌年に東京の立教大学校との合併につながる要因の一つとなりました。

また、日本[[聖公会]]の成立や次期校長の辞任など、複合的な要因が重なり、1887年2月、英和学舎は閉校し、東京の立教大学校と合併しました。これにより、立教大学は新たなスタートを切ることとなりました。

著名な卒業生たち

英和学舎からは、聖職者、実業家、教育者、新聞記者、医師、官吏など、多岐にわたる分野で活躍する多くの著名な人物が輩出されました。その中には、立教大学の初代学長である元田作之進や、日本初のシェイクスピア劇翻訳者である河島敬蔵、日本の近代昆虫学の祖とされる松村松年などが含まれています。

英和学舎の遺産

英和学舎は、その短い歴史の中で、日本の教育界に大きな足跡を残しました。英語教育の先駆けとして、また、キリスト教の精神に基づいた教育機関として、多くの人材を育成し、後の日本の発展に貢献しました。その遺産は、現在の立教大学にも受け継がれています。


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