アレクシオス3世アンゲロス

アレクシオス3世アンゲロス：帝国の混迷を深めた皇帝

アレクシオス3世アンゲロス（1156年 - 1211年）は、東ローマ帝国アンゲロス王朝の第2代皇帝として、1195年から1203年まで在位しました。彼は初代皇帝イサキオス2世アンゲロスの弟であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。

即位までの道のり

アレクシオスは、アンドロニコス・アンゲロスの子として生まれました。兄イサキオスと同様に、コムネノス王朝の遠縁にあたるため、コムネノス王朝のアンドロニコス1世によって暗殺されそうになった過去を持ちます。この危険を逃れるため、彼はアンティオキアに避難しましたが、そこでイスラム勢力に捕らえられてしまいました。しかし、兄イサキオスが皇帝として即位すると、莫大な身代金と引き換えに解放され、帝国に帰還しました。

帰国後、アレクシオスは兄の治世を補佐する立場として、帝国の宰相や元帥の役職に就きました。しかし、次第に兄との対立を深め、1195年にはクーデターを起こし、兄イサキオスを幽閉して帝位を奪いました。こうして、アレクシオス3世はアンゲロス王朝の第2代皇帝として即位しました。

暴政と失政

アレクシオス3世の治世は、兄イサキオス2世以上に無能であり、暴君としても知られています。神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世からの圧力に屈し、多額の献納金を要求されると、歴代皇帝の墓を暴いてまで装飾品を処分するという暴挙に出ました。さらに、兄の時代から交易の利害で優遇されていたヴェネツィア共和国との関係を悪化させ、逆にヴェネツィアと対立していたジェノヴァ共和国やピサ共和国を優遇するなど、外交面でも失策を重ねました。これらの政策により、彼は国内外に多くの敵を作り、帝国の基盤を大きく揺るがしました。

追放と最期

1203年7月、アレクシオス3世の甥にあたるアレクシオス4世が、第4回十字軍を味方につけ、首都コンスタンティノポリスに侵攻してきました。これに対抗する力を持たなかったアレクシオス3世は、皇位を奪われ、帝国を追放されることになりました。

追放後、アレクシオス3世は、小アジアのルーム・セルジューク朝のスルタン、カイホスロー1世のもとに亡命しました。その後、娘婿であるテオドロス1世ラスカリスがニカイア帝国を建国すると、その庇護を受けました。しかし、アレクシオス3世はテオドロスに対して帝位を要求し、対立を深めました。

1211年、アンティオキアの攻防戦でカイホスロー1世が戦死すると、アレクシオス3世は後ろ盾を失い、テオドロスによって修道院に幽閉されました。そして、間もなく56歳でその生涯を終えました。

アレクシオス3世の家系

アレクシオス3世の家系は以下の通りです。

曽祖父：アレクシオス1世コムネノス - コムネノス朝初代皇帝
祖父：コンスタンティノス・アンゲロス
祖母：テオドラ・コムネナ - アレクシオス1世の娘
叔父（父の弟）：ヨハネス・アンゲロス・ドゥーカス - 尊厳公
叔父の王子（庶子）：ミカエル1世コムネノス・ドゥーカス - エピロス専制侯初代王
父：アンドロニコス・アンゲロス
母：エウフロシュネ・カスタモニティッサ
后：エウフロシュネ・ドゥーカイナ・カマテラ
王女：エイレーネー - アンドロニコス・コントステファノス妃、後にアレクシオス・パレオロゴス妃
王女：アンナ - イサキオス・コムネノス妃、後にテオドロス1世ラスカリス（ニカイア帝国初代皇帝）妃
* 王女：エウドキア - ステファン・ネマニャ（セルビア王国初代王）妃、後にムルツフロス（アンゲロス朝4代皇帝）妃

関連作品

アレクシオス3世が登場するゲームとして、光栄（現コーエーテクモゲームス）の「蒼き狼と白き牝鹿シリーズ」が挙げられます。これらの作品では、彼の治世や人物像が描かれています。

アレクシオス3世の治世は、東ローマ帝国の衰退を加速させた一因として歴史に名を残しています。彼の無能と暴政は、帝国の内乱を招き、後の十字軍によるコンスタンティノープル陥落へと繋がる大きな要因となりました。彼の生涯は、権力と支配がいかに容易に腐敗し、混乱を招くかを如実に示す事例と言えるでしょう。

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