テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港

テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港

テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港は、アラスカ州アンカレッジの南西10kmに位置する国際空港です。アラスカ航空のハブ空港として機能しているほか、隣接するフッド湖とスペナード湖では水上機が活発に利用されており、世界で最も水上機の発着便が多い空港としても知られています。

歴史

1948年にフェアバンクス国際空港とともに建設が開始され、1951年12月に開港しました。開港当初の滑走路は、東西方向が8400フィート、南北方向が5000フィートでした。当初はアラスカ州内路線やアメリカ本土、カナダとの路線が中心で、冷戦下にあったソビエト連邦への定期便は運航されていませんでした。

1953年にはターミナルビルが完成し、1955年には南東端にアラスカ州軍航空隊のクーリス基地が開設されました。1957年頃から、東アジアとヨーロッパを結ぶ航路の中継地としての役割を担うようになり、1960年には東西方向の滑走路が10600フィートに延長されました。1960年代には7つの航空会社が利用する主要な航路の要衝となりました。

1964年3月27日に発生したアラスカ地震により管制塔が倒壊しましたが、隣接するフッド湖の水上機用管制塔で代行されました。1970年代には石油開発とパイプライン建設が進み、旅客輸送が急増し、1975年にはフッド湖とスペナード湖が水上機用空港として拡充されました。1980年には南北方向の滑走路が10496フィートに延長されました。

1980年代の石油価格暴落後には、国際線中継地としての重要性が高まりました。1990年代にはソ連空域の開放により旅客輸送が減少した一方で、貨物輸送が増加し始め、1996年には南北方向の滑走路が11584フィートに延長されました。2000年には、アラスカ州の発展に貢献したテッド・スティーブンス上院議員の名を冠するよう改名されました。2011年には、南東部/西滑走路の再建と1500フィートの延長が行われました。

極圏航路の要衝

1950年代後半以降、東アジアとヨーロッパを結ぶ航空路が活発になりました。当初は南回りヨーロッパ線が主流でしたが、シベリアルートは当時の国際情勢から利用が難しく、代替として北極圏を通過する極圏航路が開設されました。当時、就航していた航空機の航続距離では、途中給油が必要だったため、アンカレッジ国際空港が給油のための寄港地として利用されました。その後、ジェット旅客機が導入されると、日本とアメリカ東海岸・中西部間や、韓国、台湾との路線でも利用が拡大しました。

給油寄港便の減少

1972年に日本航空がシベリア運航ルートを開設し、1976年にはパンアメリカン航空が東京-ニューヨーク直行便にボーイング747-SPを導入しました。さらに、1980年代中頃に新型機が導入されると、直行便が増え、アンカレッジへの寄港便数は減少しました。

1989年以降は、ソ連の外貨獲得政策によりシベリアルートが開放され、日本航空も航路をシベリア経由に変更したため、1991年10月31日を最後にアンカレッジ経由の北回りヨーロッパ線は廃止されました。他の航空会社も同様の動きを取り、1990年代中盤にはアンカレッジに寄港する国際線旅客便はほとんどなくなりました。

貨物便の要衝に

旅客便が減少する一方で、長距離貨物便がアンカレッジ国際空港を給油拠点として利用するようになりました。2020年の貨物取扱量は世界4位となり、繁忙な貨物空港へと変貌しました。アンカレッジは北半球の主要都市へのアクセスが良く、広大な敷地面積が物流基地の建設に適しており、旅客便の減少により貨物便の優先発着が可能になったことが要因です。また、アンカレッジは鉄道や港湾施設へのアクセスも良く、貿易拠点としても機能しています。

航空貨物輸送では、積載量増加のために給油量を減らすコスト削減手法が一般化しており、給油中継地の重要性が再認識されました。さらに、電子機器や冷凍魚介類など、高付加価値の航空輸送に適した貨物需要が拡大したことも、貨物便の増加に繋がっています。アンカレッジには、フェデックスやUPS航空、日本貨物航空など、30以上の航空貨物関連企業が拠点を置いています。

近年の旅客便

直行便が廃止されたため、日本からアンカレッジへ行くには、シアトルやサンフランシスコでの乗り継ぎが必要です。アラスカ州政府は、定期便の再開を要望しました。2002年には、日本航空が釣り客を対象とした夏季チャーター便を運航し、2003年からはオーロラ観光客を対象とした冬季の運航も開始しました。しかし、このチャーター便は約10年続いた後、フェアバンクス国際空港に変更されました。2019年の旅客数は570万人で、国内線が中心です。

日本との関わり

1960年代から1980年代にかけて、日本航空はアンカレッジ国際空港をアメリカ線、ヨーロッパ線の中継地として利用しました。その結果、アンカレッジ国際空港は「日本航空の最大のユーザー」と呼ばれるほど、多くの経由便がありました。空港ターミナル内には、日本語の看板を掲げた免税店やうどん店など、日本人客を対象とした店舗が存在しました。

逸話

1971年9月26日には、昭和天皇と香淳皇后がヨーロッパ訪問の途中でアンカレッジに立ち寄り、リチャード・ニクソン大統領夫妻と会談しました。これは、戦前を含めて史上初の日米元首による顔合わせとなりました。ニクソン大統領は、沖縄返還や日米関係の修復という状況下で、アンカレッジまで出向いて歓迎しました。

就航路線

現在は主に貨物便が中心です。旅客便は国内線が主体で、国際線は季節運航が多いです。

事故・事件

アンカレッジを経由する国際航路は、旧ソ連領空近くを長時間飛行するため、ソ連防空軍機によるスクランブル事件や強制着陸事件が度々発生しました。特に、大韓航空機銃撃事件と大韓航空機撃墜事件は、冷戦下においてソ連の領空に隣接した航空路を飛行する危険性を認識させることになりました。

1978年4月20日：大韓航空機銃撃事件で、ソ連空軍のミサイル攻撃を受け、不時着。
1983年9月1日：大韓航空機撃墜事件で、サハリン沖上空でソ連空軍のミサイルにより撃墜。

交通アクセス

People Mover Route 7A (Dimond Center方面)
タクシー
レンタカー

外部リンク

空港公式ページ
「アンカレッジ」なぜ聞かなくなった? 日本に縁深かった空路の要所、その「いま」

関連項目

フッド湖水上飛行場

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