テリジノサウルス上科

テリジノサウルス上科(Therizinosauroidea)とは

テリジノサウルス上科（またはテリジノサウリア）は、獣脚類コエルロサウリアに属するクレードの一つです。白亜紀前期から白亜紀後期のモンゴル、中国、北アメリカで化石が発見されており、オーストラリアでも発見される可能性があります。前肢、頭骨、骨盤にはマニラプトラとその他の獣脚類の両方に類似する特徴が見られ、鳥類との近縁性も示唆されています。

名称は古代ギリシャ語の「刈り取る」を意味する「therízein」と「トカゲ」を意味する「σαῦρος (saûros)」に由来します。古い名称であるセグノサウルス類は、ラテン語の「鈍い」を意味する「segnis」と「σαῦρος」に由来します。

形態の特徴

テリジノサウルス上科は、その独特な形態から、分類が難しい恐竜として知られています。彼らは長い首と広い胴体を持ち、独特な形状の坐骨は、かつて鳥盤類の化石の特徴であると考えられていました。最も特徴的なのは、巨大な手の爪で、テリジノサウルスにおいては約1mもの長さに達します。この爪と前肢の広い可動範囲は、彼らが植物食性であった可能性を強く示唆しています。

彼らは、カリコテリウム類、オオナマケモノ、類人猿、ジャイアントパンダなどの大型哺乳類と同様に、長いリーチと湾曲した爪を使って木の枝を手繰り寄せ、植物を食べていたと考えられています。ベイピアオサウルスの皮膚印象からは、原始的な羽毛に覆われていたことがわかっています。この羽毛は、コンプソグナトゥス類のシノサウロプテリクスのものと似ており、ディスプレイ用の羽軸のような構造を持っていたと考えられます。

テリジノサウルス上科の体のサイズは多様で、全長2.2mのベイピアオサウルスから、最大級の獣脚類である全長10m、体重5tと推定されるテリジノサウルスまで存在しました。

研究の歴史

テリジノサウルス上科は、その特徴的な形態と化石の希少性から、長らく謎の多いグループでした。最初の発見から数十年間、系統関係を巡る論争が続きました。

1979年、Perleはセグノサウルスの化石が新しいグループの模式的なものであると指摘し、暫定的に獣脚類に分類しました。彼はセグノサウルス科を提唱し、上腕骨と末節骨の形態の違いから、デイノケイルス科およびテリジノサウルス科と区別しました。しかし、その後の研究で、セグノサウルス類とドロマエオサウルス類の骨盤の特徴が獣脚類と大きく異なっていることが判明し、竜盤類内の下目として分類されるべきだという意見も出ました。

1980年、バルスボルドらはセグノサウルス科のみを含む新しい獣脚類の下目としてセグノサウリアを命名し、エルリコサウルスを暫定的にセグノサウルス科と見なしました。しかし、エルリコサウルスの標本が骨盤を欠いていたため、セグノサウリアとの断定は困難でした。

1982年、Perleはテリジノサウルスとして記載された化石がセグノサウルスの前肢に似ていることを報告しました。彼は、テリジノサウルス科、デイノケイルス科、そしてセグノサウルス科は全て発達した前肢を持つことを指摘し、これらを同一の分類群に再分類することを提案しました。

古生物学者グレゴリー・ポールは1984年に、セグノサウルスは獣脚類の特徴を持たず、鳥脚類と同様の適応を果たした原始的な竜脚形類であると結論付けました。しかし、この考えは議論を呼びました。

1993年、ラッセルと董枝明は中国の新属アラシャサウルスを記載しました。この化石は、手足の細部がテリジノサウルスとセグノサウルスに類似しており、セグノサウルス科はテリジノサウルス上科のジュニアシノニムであると結論付けられました。また、新しい上位分類テリジノサウルス上科が提唱され、アラシャサウルスとテリジノサウルス科が含まれることになりました。

21世紀初頭には、より多くのテリジノサウルス上科のタクサが発見され、アジア以外で発見されたものも含まれています。これらの発見は、グループの初期の進化を理解するのに役立ちました。現在では、テリジノサウルス上科は多様なマニラプトラの獣脚類の一群として一般的に受け入れられていますが、マニラプトラ内での位置付けはまだ不明確です。

系統分類

テリジノサウルス上科の系統分類は、長年にわたり議論されてきました。かつては竜脚形類に近いと考えられていたこともありましたが、現在では獣脚類、特にマニラプトラに属すると考えられています。ただし、マニラプトラ内での正確な位置は、研究者によって見解が分かれています。

主な属

エシャノサウルス？
ファルカリウス
マルタラプトル
ジャンチャンゴサウルス
ベイピアオサウルス
エニグモサウルス
エルリアンサウルス
ネイモンゴサウルス
スジョウサウルス
セグノサウルス
アラシャサウルス
パラリテリジノサウルス
ナンシュンゴサウルス
ノトロニクス
リアユアノサウルス
テリジノサウルス

テリジノサウルス上科は、その独特な形態と進化の歴史から、恐竜研究において重要な位置を占めています。今後の研究によって、彼らの生態や系統関係がさらに解明されることが期待されます。

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