テーブルさん座パイ星

テーブルさん座π星

テーブルさん座π星（テーブルさんざパイせい、Pi Mensae）は、南天の星座であるテーブルさん座に位置する、肉眼でも観測可能な約6等星です。この恒星は、私たちの太陽と同じスペクトル分類G型の主系列星に属しています。

恒星の性質

テーブルさん座π星は、太陽と比較していくつかの特徴的な違いを持っています。質量、半径、そして光度はいずれも太陽よりもやや大きく、より明るい星です。年齢は太陽よりも若いと推定されており、比較的大きな固有運動、すなわち天空を移動する速度が大きいことも観測されています。将来、地球のような生命が存在しうる惑星を発見・探査するための候補天体としても注目されており、NASAが進めていたTerrestrial Planet Finder計画では、有望な候補天体の一つとしてリストアップされていました。

惑星系

テーブルさん座π星の周囲には、少なくとも3つの太陽系外惑星が発見されています。

最初の惑星 (π Mensae b)

最初に惑星の存在が確認されたのは2001年10月15日です。この時発見された惑星、π Mensae bは、当時知られていた系外惑星の中でも特に質量が大きい部類に属していました。この巨大な惑星は、非常に歪んだ楕円軌道を描いて恒星の周囲を公転しており、その公転周期は約2151日（約5.9年）です。極端な楕円軌道を持つ巨大惑星は、惑星系形成の理論において興味深い研究対象となっています。

2番目の惑星 (π Mensae c)

続いて、2018年9月16日には、2番目の惑星であるπ Mensae cが発見されました。この惑星は、太陽系外惑星探索衛星TESS（Transiting Exoplanet Survey Satellite）によるトランジット法観測データからその存在が明らかになりました。π Mensae cは、地球の約2倍の大きさを持つスーパーアース（巨大地球型惑星）に分類されます。特筆すべきは、このπ Mensae cが、TESS衛星が科学観測を開始してから初めてその存在が確認された系外惑星となったことです。この発見は、TESSによる系外惑星探査の成功を強く印象づける出来事でした。

3番目の惑星 (π Mensae d)

さらに、2022年3月2日には、3番目の惑星であるπ Mensae dの存在が発表されました。この惑星は、地上の望遠鏡を用いた高精度なドップラー分光法（視線速度法）による観測によって検出されました。π Mensae dは、恒星から比較的近い軌道を公転しており、約125日の周期で恒星の周囲を回っています。

テーブルさん座π星系は、巨大で偏心軌道を持つ惑星、トランジットを起こすスーパーアース、そして内側の軌道を回る惑星と、多様な特徴を持つ複数の惑星が存在する興味深い系として、今後のさらなる研究が期待されています。これらの惑星の存在は、恒星の視線速度の変化や、惑星が恒星の手前を通過する際の明るさの変化などを精密に観測することで確認されています。

このように、テーブルさん座π星は、その恒星自身の性質に加え、複数の異なるタイプの系外惑星を持つことで、惑星系の多様性や形成過程を理解する上で重要な研究対象となっています。

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