ディオプトリ

ディオプトリー（ディオプトリ、ディオプター）について

ディオプトリー（記号: Dptr, D）とは、レンズの屈折度、すなわち光を曲げる力を表す単位です。主に眼鏡やコンタクトレンズなどの視力矯正レンズの度数を表す際に用いられます。ディオプトリーは、レンズの焦点距離をメートルで表したものの逆数として定義されます。

例えば、3ディオプトリーのレンズは、平行な光線をレンズの中心から1/3メートルの位置で一点に集めます。逆に、光を収束も発散もしない平らなガラス板の屈折力は0ディオプトリーです。焦点距離そのものではなく、その逆数を用いる理由は、レンズを設計する際の方程式で、物体距離、像距離、焦点距離の全てが逆数として扱われるためです。また、複数のレンズを組み合わせたときの屈折力を単純な足し算で求められるという利点もあります。例えば、2.0ディオプトリーのレンズと0.5ディオプトリーのレンズを重ねると、2.5ディオプトリーのレンズとほぼ同じ効果が得られます。

歴史

レンズの焦点距離の逆数に基づいてレンズの度数を表すというアイデアは、1866年にドイツの眼科医アルブレヒト・ナーゲルによって提唱されました。その後、1872年にフランスの眼科医フェルディナン・モノワイエが、ヨハネス・ケプラーの光学理論書『ジオプトリス』から着想を得て、「ディオプトリー」という名称を提案しました。

単位記号

ディオプトリーの単位記号は、日本では「Dptr」または「D」と定められています。眼科学の分野では、記号「D」が一般的に使われます。ドイツ規格協会(DIN)などの一部の国家標準化団体では、「dpt」という記号を使用することもあります。

眼科矯正における応用

屈折力がほぼ加算的に扱えるため、眼科医は眼とレンズの光学系全体を詳細に分析することなく、目の屈折異常を単純に補正するだけで矯正レンズを処方することができます。人の目の場合、リラックスした状態での屈折力は約60ディオプトリーであり、そのうち約40ディオプトリーを角膜が、残りの約20ディオプトリーを水晶体が担っています。

ピント調節の際には、毛様体筋が収縮し、水晶体にかかる張力が緩むことで、水晶体の凸面が大きくなり、屈折力が変化します。この調節力は年齢とともに低下し、15歳では約11〜16ディオプトリーですが、25歳で約10ディオプトリー、60歳以上では約1ディオプトリー程度にまで減少します。

レンズの焦点距離は、光の進行方向に焦点がある場合を正とし、遠視や老眼の矯正に用いられる凸レンズは正のディオプトリー値を持ちます。一方、近視の矯正に用いられる凹レンズは負のディオプトリー値を持ちます。通常、正の値の場合も「+2.0 Dptr」のように符号を付けて表記します。軽度の近視用のメガネは-0.50〜-3.00ディオプトリー程度、市販の老眼鏡は+1.00〜+4.00ディオプトリー程度です。眼科医は通常、0.25ディオプトリー刻みで度数を測定します。

ディオプトリーの絶対値が大きいことを、俗に「度が強い」「度がきつい」などと表現します。

まとめ

ディオプトリーは、レンズの屈折度を客観的に表すための便利な単位であり、眼科医療において視力矯正レンズの度数を決定する上で欠かせない要素です。この単位の理解は、眼鏡やコンタクトレンズを選ぶ際に役立つだけでなく、目の屈折異常に関する理解を深める上で重要です。

関連項目

非点収差
屈折光学
レンズカーブクロック
レンズメーター
光学
検眼

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