ディオメーデー

ディオメーデー

ディオメーデー（古希: Διομήδη, Diomēdē）は、古代ギリシアの神話世界に登場する女性たちの名前です。この名前を持つ人物は複数知られていますが、中でも特に著名な二人の女性について以下に記述します。

クスートスの娘ディオメーデー

一人のディオメーデーは、テッサリア地方の王クスートスと、アテナイの王エレクテウスの娘クレウーサの間に生まれた娘です。彼女にはアカイオスとイオーンという兄弟がいました。後に彼女はポーキス地方を治める王デーイオーンと結婚し、夫婦の間にはアステロディアー、アイネトス、アクトール、ピュラコス、ケパロス、そしてニーソスという複数の子供たちが生まれました。彼女の系譜は、初期ギリシア世界の主要な部族であるアカイア人やイオニア人の祖とされる兄弟たちと繋がっており、神話上の重要な位置を占めています。

アキレウスの捕虜となったディオメーデー

もう一人の著名なディオメーデーは、レスボス島の王ポルバースの娘として知られています。トロイア戦争の最中、ギリシア軍がレスボス島を攻め落とした際に捕虜となり、英雄アキレウスの奴隷として仕えることになりました。

ホメロスによる叙事詩『イーリアス』の中では、彼女が登場するのは一度だけです。アキレウスがアガメムノーンからの使者を退けた夜、彼の陣営で老将ポイニクスと親友パトロクロスと共に休息していた際、ディオメーデーがアキレウスに添い寝した場面が語られています。この記述は、アキレウスの人間的な側面や、捕虜である彼女との関係を示唆しています。

クレーテー島の歴史家ディクテュスによれば、このディオメーデーは、同じくアキレウスの著名な捕虜であり妾であったブリーセーイスと同い年であったとされています。また、二人は似たような境遇にあったため非常に仲が良く、互いに別れたがらないほどであったとも伝えられています。そのため、彼女たち二人は、アキレウスの戦利品として同時に分配されることになったと言います。

旅行家パウサニアースは、デルポイのアポローン神殿に描かれた絵画の中に、ブリーセーイスやパトロクロスの女奴隷イーピスと共に、ディオメーデーの姿があったことを記録しています。これは、彼女たちがトロイア戦争における英雄たちの物語において、一定の役割や重要性を持っていたことを示唆するものです。

その他のディオメーデー

上記二人の他にも、ディオメーデーという名前を持つ女性が神話には登場します。例えば、スパルタ王アミュクラースと結婚し、キュノルテースやヒュアキントスの母となったラピテース族の娘や、アルゴナウタイの一員プローテシラーオスの母となったイーピクロスの妻などもディオメーデーと呼ばれています。これらの例からも、ディオメーデーという名前が古代ギリシアで比較的用いられていたことがわかります。

もう一度検索