ディオーレース

ディオーレース（Διώρης）

古代ギリシャの伝承において、「ディオーレース」という名は複数の人物に冠されており、特に神話の世界では異なった出自と運命を持つ三人の人物が知られています。長母音を省略してディオレスとも表記されるこの名前を持つ者たちは、それぞれに興味深い物語を持っています。

エーリスのアマリュンケウスの子

エーリス地方の王の一人であったアマリュンケウスを父に、オーレノスの王デクサメノスの娘ムネーシマケーを母に持つディオーレースは、ヒッポストラトスという兄弟がいました。彼はアムピマコス、タルピオス、ポリュクセイノスといった他の指導者たちと共に、エーリスから集められた40隻の船団を率いて、名だたるトロイア遠征軍に加わりました。ただし、アポロドーロスやヒュギーヌスによる軍船のリストには、彼の名前が見られない場合もあります。

トロイア戦争におけるディオーレースの最期は悲劇的でした。トラーキアの武将ペイロオスが投げた石が、彼の右足のくるぶしの骨と筋を粉々に砕き、ディオーレースは仰向けに倒れ込んでしまいました。その無防備な姿に、ペイロオスは容赦なく槍を突き立てたといわれます。クレーテー島のディクテュスが伝えるところでは、彼はポリュクセイノスと共にヘクトールとの戦闘中に負傷したとされています。また、プリュギアのダーレスによれば、パトロクロスが戦死した後の激しい戦いの中で、他の多くの名だたる武将たちと共にヘクトールの手にかかって討たれたと記されており、その死に関する記述は文献によって若干異なります。

風神アイオロスの子

二人目のディオーレースは、風を司る神アイオロスの子として知られています。アイオロスには六人の息子と六人の娘、合計十二人の子供がおり、彼はその独特な慣習として、自身の娘と息子たちを結婚させたと伝えられています。ニカイアのパルテニオスによる記述では、ディオーレースの姉妹であるポリュメーレーが、島を訪れたオデュッセウスと密会したことが露見し、父アイオロスによって死刑に処されそうになった出来事が語られています。この時、ディオーレースはアイオロスの許しを得て、姉妹であるポリュメーレーと正式に結婚したとされています。

トロイア王プリアモスの子

三人目の主要なディオーレースは、トロイアの偉大な王プリアモスの数多くの子の一人です。トロイア戦争で故郷が滅亡した後、彼はアイネイアースに忠実に従い、遠くイタリアの地を目指して航海を共にしました。イタリアに到着後、アンキーセースの葬礼を記念して催された競技会において、彼は徒競走に参加しています。この競走には、ニーソス、エウリュアロス、アカルナーニアー出身のサリウス、テゲアー出身のパトロン、そしてシケリア島出身のヘリュムスやパノペスといった屈強な選手たちが競い合いましたが、ディオーレースは堂々たる走りで三着に入賞しました。しかし、彼の生涯はそこで終わりませんでした。その後、彼はイタリアの地でトゥルヌスとの戦いに巻き込まれ、兄弟であるアミュコスと共に命を落としたと伝えられています。

その他の言及

上記の三人とは別に、アキレウスの信頼厚い部下であり、彼の戦車手としても有名なアウトメドーンの父もディオーレースという名であったとされています。このように、「ディオーレース」という名前は、神話の中で様々な立場の人物に用いられており、それぞれの物語に彩りを添えています。

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