フェンチャーチ・ストリート駅

フェンチャーチ・ストリート駅：ロンドンシティの心臓部を走る歴史と近代が交差する駅

フェンチャーチ・ストリート駅は、ロンドン金融街シティ・オブ・ロンドンの南東部に位置する鉄道駅です。ロンドン塔のすぐ近くというロケーションも魅力で、チャリング・クロス駅から東へ約3.2キロメートルのところにあります。ロンドンのターミナル駅の中でも最小規模ながら、非常に多くの列車が発着する、活気あふれる駅となっています。

駅舎とプラットフォーム

灰色のレンガ造りの駅舎は、円形の切妻屋根が特徴的です。1960年代に改修された稲妻形のキャノピー（天蓋）は、駅舎の象徴的な存在となっています。2階部分には11個の丸いアーチ型の窓が並び、近年修復された駅時計も印象的です。

駅は高架式で、2つの島式ホームからなる4つのプラットフォームを有しています。特にピーク時間帯は非常に混雑するため、スムーズな乗降を確保するために、朝のラッシュ時は島式ホームを交互に使用するという工夫が凝らされています。プラットフォーム上部には、15階建てのワン・アメリカ・スクエアなど、高層オフィスビルが建設されており、近代的な都市風景と歴史的な駅舎が共存する独特の景観を形成しています。

駅にはフェンチャーチ・プレイスへのメインエントランスと、タワー・ヒル駅への連絡口の2つの出口があります。メインコンコースは2層構造で、階段、エスカレーター、エレベーターが設置され、バリアフリーにも配慮されています。各階にはチケット売り場、自動改札機、売店などが設置され、利用者の利便性を高めています。

歴史

フェンチャーチ・ストリート駅は、シティ地区で最初に建設された鉄道駅です。1841年7月20日に開業し、それまでマイノリーズにあった終着駅に取って代わる形で、ロンドンとブラックウォール鉄道（L&BR）により、ウィリアム・タイトの設計で建設されました。その後、1854年にはジョージ・バークリーによる設計で再建され、丸天井屋根とメインファサードが追加されました。

1858年には、ロンドン・ティルブリー・アンド・サウスランド鉄道（LT&SR）のロンドン終着駅となり、さらに1850年から1865年まではノース・ロンドン鉄道のシティ終着駅も兼ねていました。19世紀末から20世紀前半にかけては、グレート・イースタン鉄道（GER）もリバプール・ストリート駅の混雑緩和のため、この駅を利用していました。

1926年にL&BRが事実上廃止された後も、1948年に旧イースタン・カントリーズ線がセントラル線に移管されるまで、LT&SRが主要な利用者となりました。

ロンドン地下鉄との接続

1970年代には、フリート線計画の一環として、フェンチャーチ・ストリート駅をロンドン地下鉄ネットワークに接続する計画がありました。チャリング・クロス駅からフェンチャーチ・ストリート駅までの延伸が検討されましたが、政治的な問題により遅延し、最終的には1999年にジュビリー線の延伸が実現しました。しかし、この延伸はフェンチャーチ・ストリート駅を経由せず、テムズ川南岸を通るルートとなったため、フェンチャーチ・ストリート駅は現在もロンドン地下鉄とは接続されていません。タワー・ヒル駅までは徒歩圏内です。

運行情報

現在、フェンチャーチ・ストリート駅には、c2cのイースト・ロンドンおよびサウス・エセックス方面への列車が乗り入れています。運行ルートはウェストハム、バーキング、アップミンスター、バジルドン、ベンフリート、チャフォード・ハンドレド、グレイズ、ティルブリー、サウスエンド、シューバリーネスなどを経由します。オフピーク時の運行本数は、到着・出発合わせて1時間あたり8本程度ですが、ピーク時には約20本に増発されます。

隣の駅

c2c ロンドン・ティルベリー・アンド・サウスエンド線
ライムハウス駅

メディアにおけるフェンチャーチ・ストリート駅

フェンチャーチ・ストリート駅は、イギリス版モノポリーゲームにも登場するなど、文化的にも重要な存在となっています。小説やブランド名にもその名前が使われています。

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