ディスノミア (衛星)

ディスノミアの概要

ディスノミア ((136199) Eris I Dysnomia) は、準惑星エリスの唯一の既知の衛星です。2005年にマイケル・ブラウンによって発見され、当初は仮符号 S/2005 (2003 UB313) 1 が与えられました。2006年9月13日に正式に命名され、その名前はギリシャ神話における不和の女神エリスの娘であり、無法の女神デュスノミアーに由来しています。

発見の経緯

ディスノミアの発見は、2005年にハワイのマウナケア山にあるW・M・ケック天文台での観測によってもたらされました。当時、新たに導入されたレーザーガイド星補償光学系を用いて、冥王星、ハウメア、マケマケ、そしてエリスといった、太陽系外縁部の明るい天体の観測が行われていました。2005年9月10日の観測において、エリスの周囲を回る衛星が発見されました。

ディスノミアの物理的特性

ディスノミアは、エリスと比較して1/60程度の明るさで、直径は約1/8とされています。最初の観測では、エリスの質量を正確に推定するにはデータが不足していましたが、衛星の軌道要素の一部は推測されました。特に公転周期は約14日と見積もられました。

ケック望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡によるその後の観測結果を組み合わせることで、ディスノミアの軌道要素がより詳細に把握され、その公転周期は15.774±0.002日であることが判明しました。ディスノミアはエリスの周りをほぼ円形の軌道で公転しており、その半径は約37,350±140kmです。これらの観測結果から、エリスの質量は冥王星の1.27倍であることが明らかになりました。

形成過程

現在、知られている4つの冥王星型天体は全て衛星を持っていることが確認されています。一方、より暗い外縁天体では、衛星が発見されている割合はわずか10%程度です。このことから、大きな外縁天体は過去に頻繁な天体衝突を経験していると考えられています。直径1,000kmクラスの天体同士が衝突すると、大量の破片が宇宙空間に放出され、これらの破片が合体して衛星が形成されることがあります。地球と月の形成過程も、同様のジャイアント・インパクト説で説明されています。

命名の由来と逸話

ディスノミアという名前は、発見者であるマイケル・ブラウンによって提案され、国際天文学連合によって承認されました。衛星の命名規則に従い、主星に関連する下位の神の名前が選ばれました。また、デュスノミアが「無法」の女神であることと、人気テレビドラマ『ジーナ』で主役を演じたルーシー・ローレスの名前を掛けた遊び心も含まれています。命名以前には、エリスとディスノミアはそれぞれ「ジーナ」と「ガブリエル」という愛称で呼ばれていました。これは、劇中でジーナの相棒として登場するキャラクター名に由来します。さらに、マイケル・ブラウンは、冥王星の衛星カロンを発見したジェームズ・クリスティーが、自身の妻シャーリーンの名前の最初の文字を取って命名したことを引き合いに出し、ディスノミアの最初の文字と、彼の妻ダイアンの名前の最初の文字が同じであることを示唆しています。

関連項目

小惑星の衛星
エリス (準惑星)

外部リンク

* エリスとディスノミア

もう一度検索