デイジー・ベル

デイジー・ベル（Daisy Bell）

「デイジー・ベル」は、1892年にイギリスのシンガーソングライター、ハリー・ダクレによって作詞・作曲された、ポピュラーソングのスタンダードナンバーです。「二人乗りの自転車（A Bicycle Built for Two）」という副題でも知られ、歌詞の一節から「デイジー、デイジー（Daisy, Daisy）」とも呼ばれています。

楽曲の背景

曲名にある「デイジー」は、英語でヒナギクを意味する「daisy」とは異なり、歌詞中では頭文字が大文字の「Daisy」で表記されるため、女性の名前と考えられます。一説には、エドワード7世の愛妾であったウォリック伯爵夫人デイジー・グレヴィルがモデルとも言われています。

この曲は、世界で初めてコンピューターが歌った歌として歴史に名を刻んでいます。1961年にIBM 704が音声合成によって歌声を披露したことが、1968年公開のSF映画『2001年宇宙の旅』の終盤シーンの着想源となりました。

ハリー・ダクレは1922年に亡くなっているため、メキシコなどの一部の国を除き、著作権は消滅しており、パブリックドメインとなっています。

歴史

この楽曲は、1892年にハリー・ダクレによって発表されました。音楽評論家のダヴィッド・ユエンは、著書『アメリカン・ポピュラー・ソングス』の中で、この曲について触れています。

レコードでの初出は、1893年にダン・W・クインによって録音されたものです。

コンピューターによる歌唱

「デイジー・ベル」は、世界で初めてコンピューターが歌った歌として広く知られています。1961年、ベル研究所のIBM 704がこの曲を歌いました。音声合成のメインプログラムはジョン・ケリーとキャロル・ロックボームが担当し、伴奏はマックス・マシューズがプログラミングしました。この時の録音は、アメリカ議会図書館の全米録音資料登録簿に登録されています。

SF作家のアーサー・C・クラークは、1962年にベル研究所を訪れた際、IBM 704による歌唱デモンストレーションを見学しています。この経験が、1968年のSF映画・小説『2001年宇宙の旅』に影響を与えたとされています。映画では、機能を失いつつあるコンピュータHAL 9000が、「デイジー・ベル」の一部を歌うシーンがあり、その際にIBM 704の存在についても言及されています。映画で実際に歌声を担当したのは、HAL 9000の声優を務めたダグラス・レインです。

その後も、「コンピュータによる歌唱」の例として、この曲が用いられる機会が多くありました。

1985年には、クリストファー・C・ケイポンが、フロッピーディスクドライブであるコモドール1541の読み書きヘッドの動作音を利用して音楽を奏でるコモドール64用のプログラムを制作し、「デイジー・ベル」をデモ演奏に使用しました。

1999年に登場したデスクトップバーチャルアシスタントソフト「BonziBuddy」は、ユーザーから歌うように求められると「デイジー・ベル」を歌いました。このソフトのキャラクターは、当初は緑色のオウムでしたが、後に紫色のゴリラに変更されました。

AppleがiPhone 4Sに搭載したiOS向け秘書機能アプリケーションであるSiriも、「歌って」というリクエストに対して「デイジー・ベル」の一節を口ずさむ機能を持っています。また、マイクロソフトのAIアシスタント「Cortana」にも同様の機能が搭載されています。

歌詞

歌詞にはいくつかのバージョンが存在しますが、以下はアメリカ国立衛生研究所(NIH)のページに掲載されているものです。

[歌詞の一例] (具体的な歌詞は省略)

脚注

(脚注の内容は省略)

外部リンク

歌詞とMIDI（National Institutes of Health）
The Daisy Bell Page（Chris Komuves）
Works of Edward M. Favor - 1894のデイジー・ベルの録音（MP3、3番中2番まで）
Daisy Bell / Bicycle Built for Two - YouTube（Cocomelon）

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