デイヴィッド・ブラウン (映画プロデューサー)

デイヴィッド・ブラウン：映画と演劇界の巨匠

デイヴィッド・ブラウン（David Brown, 1916年7月28日 - 2010年2月1日）は、アメリカを代表する映画および劇場のプロデューサー、そして才能ある著作家でした。彼の名前は、ピーター・ベンチリーのベストセラー小説を映画化した『ジョーズ』の制作によって、世界中に知られることとなりました。

生い立ちと教育

ニューヨークで生まれたデイヴィッド・ブラウンは、スタンフォード大学とコロンビア大学ジャーナリズム大学院で学び、その後のキャリアを形成する上で重要な基礎を築きました。

ジャーナリストから映画プロデューサーへ

ブラウンはジャーナリストとしてキャリアをスタートさせ、『サタデー・イブニング・ポスト』、『ハーパーズ』、『コリアーズ』といった著名な雑誌に寄稿し、編集者としても活躍しました。特に『コスモポリタン』誌では編集長を務め、その後妻となるヘレン・ガーリー・ブラウンが同誌に加わるまで、その手腕を発揮しました。

1951年、プロデューサーのダリル・F・ザナックにその才能を見出され、20世紀フォックスのストーリー部門のトップとして迎え入れられました。その後、クリエイティブ・オペレーション部門のエグゼクティブ・バイスプレジデントに昇進し、映画製作における手腕を磨きました。1971年には、ザナックの息子であるリチャード・D・ザナックと共にフォックスを離れ、ワーナー・ブラザースに移籍。翌年には独自の制作会社を設立し、独立したプロデューサーとしての道を歩み始めました。

数々の名作を生み出す

ザナック/ブラウンの共同制作として、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが主演した『スティング』（1973年）が公開され、大きな成功を収めました。1974年には、ユニバーサルピクチャーズと共にスティーヴン・スピルバーグ監督のデビュー作『続・激突！/カージャック』をプロデュース。この作品は、後のスピルバーグ監督の活躍を予感させるものでした。

その後も、シドニー・ルメット監督、ポール・ニューマン主演の法廷ドラマ『評決』（1982年）、ロン・ハワード監督のSF映画『コクーン』（1985年）、ブルース・ベレスフォード監督、ジェシカ・タンディとモーガン・フリーマン主演のコメディドラマ『ドライビング Miss デイジー』（1989年）など、12本以上の映画でプロデューサーまたはエグゼクティブプロデューサーとして参加。特に『ドライビング Miss デイジー』は、アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞し、映画史にその名を刻みました。

ブラウンは単独でも、『アンジェラの灰』（1999年）や『ショコラ』（2000年）などの映画を制作し続けました。

ブラウンとザナックは、スピルバーグ監督の『ジョーズ』（1975年）の成功をはじめとする映画制作における貢献が評価され、1990年には映画芸術科学アカデミーからアービング・G・タルバーグ賞を授与されました。

演劇界での活躍

映画界だけでなく、演劇界でもその才能を発揮しました。ブロードウェイでは『成功の甘き香り：ミュージカル』（2002年）、『ペテン師と詐欺師』（2005年）、オフ・ブロードウェイではジェリー・ハーマンのミュージカルレビュー『ショーチューン』（2003年）などをプロデュースしました。

また、劇作家アーロン・ソーキンが書いたドラマ劇『ア・フュー・グッドメン』の映画と舞台の権利を取得。舞台版は1989年11月に開幕し、500回を超える公演が行われました。その後、同名の映画（1992年）が制作され、トム・クルーズとジャック・ニコルソンが主演し、大ヒットを記録しました。

私生活と人柄

1959年から亡くなるまで、ヘレン・ガーリー・ブラウンと51年間連れ添いました。ヘレンは『コスモポリタン』誌の編集長を32年間務め、『セックス・アンド・ザ・シングルガール』の著者としても知られています。

ブラウンは、最初の妻との間に息子ブルースをもうけており、異母弟にエドワード・フィッシャー・ブラウン・ジュニアがいます。彼は、その礼儀正しさ、洗練されたファッションセンス、トレードマークの口ひげ、そして作家を擁護する姿勢で知られており、出版業界やエージェントとの深い繋がりを持っていました。

ブラウンは、自身の経験に基づいた人生のアドバイスをまとめた『Brown's Guide to the Good Life: Tears, Fears and Boredom』（2005年）や、自伝的エピソードを綴った『Let Me Entertain You』（1990年）を執筆しました。

晩年と死

2010年2月1日、腎不全のため93歳でこの世を去りました。彼の死は、映画と演劇界にとって大きな損失となりました。

主なプロデュース作品

続・激突!/カージャック|続・激突!_カージャック (1974年)
アイガー・サンクション (1975年)
ジョーズ (1975年)
ジョーズ2 (1978年)
アイランド (1980年)
ネイバーズ (1981年)
評決 (1982年)
コクーン (1985年)
コクーン2/遥かなる地球|コクーン2_遥かなる地球 (1988年)
ドライビング Miss デイジー (1989年)
ザ・プレイヤー (1992年)
ア・フュー・グッドメン (1992年)
ジョン・キャンディの大進撃 (1995年)
セイント (1997年)
コレクター (1997年)
ディープ・インパクト (1998年)
アンジェラの灰 (1999年)
ショコラ (2000年)
スパイダー (2001年)

受賞歴

1990年：アービング・G・タルバーグ賞（アカデミー賞）
* 1993年：デイヴィッド・O・セルズニック・ライフタイム・アチーヴメント賞（プロデューサー組合賞）

デイヴィッド・ブラウンは、その卓越したプロデュース能力と、ジャーナリスト、作家としての才能により、映画、演劇、文学の世界に多大な貢献を果たしました。彼の作品は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

もう一度検索