デカン・スルターン朝

デカン・スルターン朝は、15世紀末から17世紀末にかけて、インドのデカン地方に割拠したイスラーム王朝の総称です。この地域には、アフマドナガル王国、ベラール王国、ビジャープル王国、ゴールコンダ王国、ビーダル王国の5つの王国が興亡したため、「ムスリム五王国」とも呼ばれます。

デカン・スルターン朝の成立

1489年、デカン地方を支配していたバフマニー朝から、3人の地方長官が独立を宣言し、アフマドナガル王国、ベラール王国、ビジャープル王国が誕生しました。その後、1518年にはテランガーナ地方の長官であったスルターン・クリー・クトゥブル・ムルクが独立してゴールコンダ王国を建国、さらに1527年にはバフマニー朝の王統が途絶えると、宰相がビーダルを中心にビーダル王国を成立させました。これにより、バフマニー朝は5つの王朝に分裂し、デカン・スルターン朝が形成されました。

相互抗争とヴィジャヤナガル王国との戦い

デカン・スルターン朝の各王国は、互いに領土を争い、絶えず紛争を繰り返しました。また、南方に勢力を持つヴィジャヤナガル王国との間で、攻防を繰り広げることもありました。1565年には、五王国の連合軍がターリコータの戦いでヴィジャヤナガル王国を破り、その首都ヴィジャヤナガルを徹底的に破壊しました。しかし、この勝利後も、スルターン朝間の争いは収まることはありませんでした。

滅亡への道

16世紀後半から17世紀にかけて、アフマドナガル王国がベラール王国を滅ぼし、ビジャープル王国がビーダル王国を滅ぼすなど、勢力図が塗り替えられていきました。さらに、北方のムガル帝国がデカン地方への進出を開始し、1600年にはアフマドナガル王国の首都を占拠、1633年（または1636年）には同国を滅亡させました。1681年、ムガル帝国の皇帝アウラングゼーブがデカン地方に侵攻すると、デカン戦争が勃発。1686年にビジャープル王国が、1687年にはゴールコンダ王国が相次いで滅亡し、デカン・スルターン朝は完全に終焉を迎えました。

デカン・スルターン朝の歴史は、分裂と抗争の歴史でしたが、その一方で、各王国は独自の文化を育み、デカン地方の歴史に大きな足跡を残しました。

参考文献

サティーシュ・チャンドラ 著、小名康之、長島弘 訳『中世インドの歴史』山川出版社、2001年。ISBN 4-634-67260-X。
S・スブラフマニヤム 著、三田昌彦、太田信宏 訳『接続された歴史 インドとヨーロッパ』名古屋大学出版会、2009年。ISBN 4-8158-0614-4。
小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。ISBN 4-634-46209-5。
Majumdar, R.C. (2006). The Delhi Sultanate. Mumbai: Bharatiya Vidya Bhavan
Majumdar, R.C. (2007). The Mughul Empire. Mumbai: Bharatiya Vidya Bhavan. ISBN 978-81-7276569-9

関連項目

バフマニー朝

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