ベラール王国

ベラール王国（ベラールおうこく、Berar Sultanate）は、15世紀末から16世紀後半にかけて、インドのデカン地方北部に存在したイスラーム王朝です。イマード・シャーヒー朝（Imad Shahi Dynasty）とも呼ばれ、首都はアチャルプルに置かれていました。

歴史

ベラール王国の歴史は、バフマニー朝の衰退期に始まります。1481年にバフマニー朝の宰相マフムード・ガーワーンが処刑されると、王国は内部抗争によって急速に衰退しました。この混乱に乗じて、1480年代後半には、デカン北部のベラール総督であったファトフッラー・イマードゥル・ムルク（ダリヤー・ハーン）が独立の動きを見せ始めました。

ファトフッラー・イマードゥル・ムルクは、もともとヴィジャヤナガル王国のバラモンでしたが、1423年にバフマニー朝が侵攻してきた際に捕虜となりました。その後、イスラーム教に改宗し、バフマニー朝に仕える身となり、最終的にはベラール総督にまで上り詰めました。1487年（または1490年）、彼はバフマニー朝からの独立を宣言し、アチャルプルを首都としてベラール王国を建国、初代君主となりました。

ベラール王国は、第3代君主ダリヤー・イマード・シャーの治世になると、ヴィジャヤナガル王国のムスリム諸王国離間政策の影響を受け、西に隣接するアフマドナガル王国からの侵攻を受けるようになりました。しかし、第4代君主ブルハーン・イマード・シャーの時代には、ビジャープル王国を中心とした5王国の連合に加わり、1565年のターリコータの戦いではヴィジャヤナガル王国を破り、その首都ヴィジャヤナガルを蹂躙するなどの軍事的な成功を収めました。

しかし、この勝利も長くは続きませんでした。同年、アフマドナガル王国とビジャープル王国からの侵攻を受け、さらに1568年にはブルハーン・イマード・シャーが宰相に実権を奪われるという内部混乱も起こりました。1572年、ベラール王国はアフマドナガル王国との激戦に敗れ、王と宰相が逮捕されアフマドナガルへ連行されました。その後、1574年にブルハーン・イマード・シャーが死亡したことで、ベラール王国は滅亡しました。

歴代君主

ファトフッラー・イマードゥル・ムルク（在位：1490年 - 1504年）
アラー・ウッディーン・イマード・シャー（在位：1504年 - 1529年）
ダリヤー・イマード・シャー（在位：1529年 - 1562年）
ブルハーン・イマード・シャー（在位：1562年 - 1574年）

参考文献

小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。

関連項目

デカン・スルターン朝

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