デルタウイング

デルタウイング (DeltaWing)

デルタウイングは、アメリカのデルタウイング・レーシング・カーズが開発した革新的なオープンボディのプロトタイプレーシングカーです。この車両は、初期にはインディカー・シリーズへの参戦を目的として、後に世界的に有名なル・マン24時間レースに出場するために設計されています。

開発の経緯

デルタウイングの開発は2009年に始まりました。当時、2012年用のマシンに関する提案がインディカー・シリーズから求められており、チップ・ガナッシ・レーシングの支援を受けて新しいマシン案が提出されました。2010年にはシカゴオートショーでそのプロトタイプが発表されたものの、インディカー・シリーズとしてはダラーラの案が採用され、最終的には競技には参加できませんでした。

その後、「プロジェクト56」としてル・マン24時間レースへの挑戦が決まりました。このプロジェクトは、フランスの西部自動車クラブ（ACO）が新設した“ガレージ#56”という枠を利用し、革新的な技術をプロモートするために設計されたもので、2012年3月1日にバトンウィロー・レースウェイ・パークで初走行を行いました。プロジェクトには日産自動車も参加し、エンジン供給とチームスポンサーを務め、ル・マンでは「ニッサン-デルタウイング」としてエントリーしました。

車体構造

デルタウイングのデザインを手掛けたのは、元ローラ・カーズのエンジニア、ベン・ボウルビーです。その特徴的な三角形のボディは、空気抵抗を低減しつつ、ドライバーの安全性を確保することを目的としています。一般的なプロトタイプレーシングカーに見られる前後ウイングはなく、代わりに後部に垂直フィンが装備されています。このデザインにより、ダウンフォースは車体下面のベンチュリ構造によって生じます。

さらに、車体の重量配分は約3:7と極端に後ろ寄りで、コーナリングに必要な力のほとんどが後輪から発生します。ミシュラン製の特注フロントタイヤは非常に幅が狭く、設計上ではフロントが1輪でも走行可能ですが、安全性を考慮して2輪を装備しています。ボディには新素材「リサイカブル・エナジー・アブソービング・マトリクス・システム（REAMS）」が採用されており、軽量かつ強固な構造を実現しています。

エンジンと性能

ル・マン用のエンジンは、日産から提供された1.6L直列4気筒直噴ターボエンジン（MR16DDT）をベースにした特注モデルです。出力は300馬力と控えめながらも、車両重量は非常に軽く、420kgという軽さがアドバンテージとなります。この特徴により、デルタウイングは他の選手たちと競い合う能力を秘めていました。

2012年のル・マン24時間レースでは、デルタウイングは競技番号0で参加。しかし、レース中にトヨタのマシンと接触し、リタイアに追い込まれるというトラブルも経験しました。尽管、同年の10月にはアメリカン・ル・マン・シリーズのプチ・ル・マンで総合5位を獲得するなど、健闘を見せていました。

継続的な挑戦とその後

その後の2013年には、日産とミシュランが離脱したことにより、新たにマツダエンジンに切り替え、別のタイヤメーカーとも提携を結びました。豆は、デルタウイングはユナイテッド・スポーツカー選手権など、他のレースへの出場を果たしましたが、2016年シーズンまでの活動にとどまりました。

一方で、デルタウイングの開発を手掛けたチームと、日産の間には知的財産権を巡る訴訟もありました。しかし、2016年に和解に至っています。

結論

デルタウイングは、その斬新なデザインと技術革新によって、モータースポーツの未来に大きな可能性を示唆しました。今後もその影響が残ることでしょう。

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