デルタ航空9877便墜落事故

事故の概要

1967年3月30日、ルイジアナ州ニューオーリンズでデルタ航空9877便の墜落事故が発生しました。この事故は、ニューオーリンズ国際空港を離陸し訓練飛行を行っていたデルタ航空9877便（ダグラス DC-8-51型機）が、空港への最終進入中に制御を失い墜落したものです。この事故により、乗員6人全員と地上の13人が死亡、さらに18人が負傷するという悲劇に見舞われました。

事故機について

事故を起こしたダグラス DC-8-51型機（機体記号：N802E）は、1959年に製造され、同年9月14日にデルタ航空に納入されました。総飛行時間は23,391時間で、4基のプラット・アンド・ホイットニー JT3D-1ジェットエンジンを搭載していました。この機体は、長年の運航実績を持つ信頼性の高い航空機でしたが、事故当時は訓練飛行に使用されていました。

乗員構成

9877便には、以下の6人の乗員が搭乗していました。

機長: 44歳の男性。1949年に入社。総飛行時間は19,008時間で、DC-8では475時間の経験がありました。DC-8の他にも、DC-3、DC-6、DC-7、DC-9、コンベア240、340、440の操縦資格を持ち、事故当時はインストラクターを務めていました。
副操縦士: 48歳の男性。1951年に入社。総飛行時間は16,929時間で、DC-8では15時間の経験でした。DC-3、DC-6、DC-7、DC-9、コンベア240、340、440の操縦資格を持っていました。
航空機関士インストラクター: 25歳の男性。1964年に入社。総飛行時間は1,371時間で、DC-8では667時間の経験がありました。
航空機関士: 30歳の男性。1965年に入社。総飛行時間は802時間で、DC-8では6時間の経験でした。
評価役パイロット: 33歳の男性。1959年に入社。総飛行時間は2,715時間で、DC-8では529時間の経験がありました。DC-6、DC-7、DC-9、コンベア240、340、440の操縦資格を持っていました。このパイロットは、航空機関士のインストラクターの能力評価のために搭乗していました。
連邦航空局オブザーバー: フライトクルーの他に、連邦航空局のオブザーバーも搭乗していました。

事故の経緯

事故当日のCST23時14分、気象情報に関するブリーフィングが行われました。ニューオーリンズ国際空港付近は濃霧で、視界が3km程度まで低下すると予想されていました。機長は右座席、副操縦士は左座席にそれぞれ着席し、0時40分に9877便は滑走路へのタキシングを開始しました。0時43分に滑走路28から離陸。0時47分には、パイロットが滑走路01へのベースレグについて報告しました。滑走路01への着陸は第2エンジンを停止した状態で行われる予定で、着陸後は滑走路19から離陸する計画でした。

管制官は9877便が最終進入を行うのを目撃しましたが、0時50分、9877便は電線に接触しながら空港手前の住宅街に墜落しました。墜落時、機体は60度近く傾いており、操縦は副操縦士が行っていました。この墜落により、複数の家屋やヒルトン複合施設が破壊されました。特に、ヒルトンホテルには当時、36人のウィスコンシン州の高校生が宿泊しており、そのうち13人が建物から投げ出されるなどして亡くなりました。

事故調査と原因

事故調査は国家運輸安全委員会（NTSB）によって行われました。最終報告書では、事故原因は機長の監視不足とパイロットによる出力調整の不適切さと結論付けられました。これらの要因が複合的に重なり、機体の制御を失ったとされています。副操縦士が操縦していた状況で、機長の監視が適切に行われていれば、事故は防げた可能性も指摘されています。

この事故は、訓練飛行中の航空機が、濃霧という悪天候の中で、わずかな操縦ミスによって、大きな惨事を引き起こす可能性があることを示した事例として、航空安全の教訓として語り継がれています。

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