トゥバ人

トゥバ人：シベリアの遊牧民と豊かな文化

トゥバ人（Тыва кижи）は、ロシア連邦南シベリアに位置するトゥバ共和国を基盤とするテュルク系民族です。エニセイ川上流域を中心に居住し、トゥバ語を母語とする約25万人が、トゥバ共和国のみならず、モンゴル国北部、新疆ウイグル自治区、カザフスタン東部にも居住しています。モンゴロイド系人種に属し、古くは『北史』や『隋書』などに「都播」「都波」として登場する民族と関連があるとされています。この記述は、トゥバ人を含む、近隣のトファラル人やコイバル人などを指している可能性があります。

歴史：交易路の要衝

トゥバ人が居住するエニセイ川上流域は、古来より匈奴、鮮卑、柔然、突厥、回鶻、黠戛斯、モンゴル帝国など、多くの勢力の興亡を目の当たりにしてきました。テュルク系民族以外にも、モンゴル系、サモエード系、ケット系など、様々な民族が複雑に混在していました。

トゥバ人の伝統的な信仰はシャーマニズムでしたが、18世紀頃からはモンゴルを経由してチベット仏教が伝来し、その影響を強く受けました。このチベット仏教の伝来は、他のテュルク系民族と比較してトゥバ人がモンゴル系[[民族]]とより深く同化していく傾向を強める一因となりました。19世紀末には、露清間の係争地となり、1914年にはロシア帝国の保護領となりました。その後、ソビエト連邦を経て、現代ロシア連邦の一員としてトゥバ共和国が成立しています。

文化：遊牧と農業の調和

トゥバ人の生活様式は、地域によって多様性を示します。サヤン山脈とタンヌ・オーラ山脈に囲まれたトゥバ盆地では、馬、牛、羊などの放牧と大麦、キビなどの栽培が盛んに行われています。一方、トジュ地方（ロシア語ではトジャ地方）では、トナカイの飼育と狩猟が中心的な生業となっています。特に、トジュ地方におけるトナカイ飼育は世界的な発祥地として知られており、その歴史と技術は、トゥバ文化を象徴する重要な要素の一つとなっています。

トゥバの文化は、厳しい自然環境の中で培われた独特の様相を呈します。遊牧民の伝統と農業の技術が融合し、独特の生活様式を築き上げてきました。厳しい環境への適応力と、民族としてのアイデンティティを維持しようとする強い意志が、トゥバ文化を特徴づけています。

著名人：多方面で活躍するトゥバ人

トゥバ出身の著名人は、政治、文化、スポーツなど様々な分野で活躍しています。政治分野では、サルチャク・トカ（トゥバ共産党第一書記）、ヘルテック・アンチマ＝トカ（王族を除く女性初の国家元首）、セルゲイ・ショイグ（ロシア連邦国防大臣）、ショルバン・カラ＝オール（トゥバ共和国政府議長）などが知られています。また、スポーツでは狼雅外喜義（大相撲力士）、文化分野ではガルサン・チナグ（詩人、作家）などが活躍しています。これらの著名人の活躍は、トゥバ人の歴史と文化を世界に知らしめる上で大きな役割を果たしています。

結語

トゥバ人は、独自の言語と文化を保持しながら、歴史の変遷の中で独自のアイデンティティを築き上げてきました。厳しい自然環境と、多様な民族との交流の中で培われた彼らの文化は、現代においても、世界にその魅力を放ち続けています。シベリアの地に根付いた彼らの歴史と文化は、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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