トゥメン

トゥメンの歴史とその意義

トゥメン（モンゴル語: ᠲᠦᠮᠡᠨ、転写: Tümen）はモンゴル系およびテュルク系の民族において使われる軍事と行政の単位です。この言葉自体はテュルク・モンゴル系の言語で「1万」を意味し、時に「1万人の軍を持つ集団」という意味でも用いられています。これらは、中国などの漢字文化圏において「万戸」や「万人隊」と訳されることがあります。

軍事・行政の基本単位

モンゴル地域の遊牧国家では、古くから十進法を基にした軍隊の編成が行われてきました。具体的には、10人、100人、1000人、さらには1万人というように、これらの数値が基本的な単位として利用されました。特に、この国民皆兵の概念は、軍事と行政の密接な結びつきを表しており、軍事的な編成がそのまま行政の単位としても適用されました。

この十進法に基づく組織形態の歴史は紀元前の匈奴時代にまでさかのぼることができます。匈奴では「一万」という単位が最大の軍事・行政単位となっており、さらにこの軍を指揮する長官は「万騎」と称されていました。

モンゴル帝国と千戸制

チンギス・カンが創設したモンゴル帝国においても、十進法に基づく行政と軍事の組織は引き継がれました。特に、モンゴル軍は「千戸制」が制定され、1,000人を基本単位としました。これは1206年の時点で129の千人隊、すなわち約129,000人の騎兵を有していたことからも確認できます。チンギス・カンの部下であるムカリ・ボオルチュは、千人隊を指揮するものとして「左手（左翼）の万戸」と「右手（右翼）の万戸」を統治するよう命じられました。

北元時代の変遷

大都が陥落し北元時代に突入すると、国の分裂や抗争が生じ、元々の「モンゴル・ウルス」が弱体化しました。また、「ウルス」という枠組みが緩やかになる一方で、かつてのトゥメンは独立した国家としての性質を帯びて強化されていきました。

再びモンゴリアが統一されたとき、ダヤン・ハーンの治世には、彼のもとで有力部族が大きく六つに分かれていました。これはモンゴル語年代記では「ダヤン・ハーンの六トゥメン」と名付けられています。これらのトゥメンは、左翼のチャハル・ウリヤンハン・ハルハと右翼のオルドス部・トゥメト・ヨンシエブから構成されています。

その後、チャハルやオルドス部の一部は、近現代においても行政区画の名前として残り続けています。このように、トゥメンは単なる軍事組織に留まらず、モンゴルの政治的・社会的な構造にも深く根ざしているのです。

結論

トゥメンの概念は、モンゴル社会における軍事・行政の枠組みを理解する上で重要な要素です。その歴史は古代から連綿と続いており、モンゴルの政治の変遷に伴って形を変えることで、多様な役割を果たしてきました。

もう一度検索