トニー・マカパイン

トニー・マカパイン（Tony MacAlpine、1960年8月29日 - ）は、アメリカ合衆国出身のギタリスト、キーボーディストであり、ハードロックやヘヴィメタルの分野でその名を知られています。幼少期から音楽の才能を開花させ、クラシック音楽の素養と高度なテクニックを融合させた独自のプレイスタイルを確立しました。

生い立ちと音楽キャリア

両親ともに黒人であり、幼少の頃からピアノとヴァイオリンの英才教育を受けました。ピアノの即興演奏の苦手を克服するためにギターを手にしたことが、彼の音楽キャリアの転機となります。シュラプネル・レコーズのマイク・ヴァーニーに送ったデモテープが認められ、1986年にソロ・アルバムでデビューを果たしました。

ソロ活動と並行して、スティーヴ・ヴァイのサポートメンバーとしてギターとキーボードを担当した時期もあります。2000年からは、バニー・ブルネルやデニス・チェンバースらとフュージョンバンド「CAB」を結成し、4枚のアルバムをリリースしました。また、ヴィタリ・クープリのソロ・アルバム、マーク・ボールズのリング・オブ・ファイア、デレク・シェリニアン率いるプラネット・エックスなど、様々なプロジェクトにギタリストとして参加し、作曲家、演奏家としての才能を発揮しています。

2007年には、CABのメンバーであるバニー・ブルネル、ヴァージル・ドナティらと共に、ミッシェル・ポルナレフのバックバンドとしてヨーロッパツアーに参加しました。2010年には、マーク・ボールズ、ヴァージル・ドナティらと新バンド「セブン・ザ・ハードウェイ」を結成し、精力的に活動を展開しました。

2015年には大腸癌を患っていることを公表し、ツアーをキャンセルしましたが、その後も音楽活動を継続しています。2016年には、ミッシェル・ポルナレフのバックバンドの一員として再びツアーに参加しました。

音楽性と奏法

マカパインは、ネオクラシカルメタルの分野で大きな影響力を持つギタリストとして知られています。ロマン派音楽やクラシック音楽、フュージョンなどの要素を融合させた独自の音楽性が特徴です。ソロ・アルバムでは、ショパンの「幻想即興曲」などのピアノ曲を自ら演奏し、収録しています。

テクニック面では、速弾き、スウィープ奏法、タッピングなどを駆使し、特に低音弦からスウィープし、最高音を右手人差し指でタップする「スウィープ・タッピング」は彼のトレードマークとなっています。この奏法により、通常のトライアド・アルペジオを中心としたスウィープ奏法に、セブンスコードの音などを加えることが可能となり、より複雑で豊かなサウンドを生み出しています。通常、右手はピックを使用しますが、タップの際には人差し指でタップし、ピックを親指と中指でつまむという独特のスタイルも特徴です。

日本では、「褐色のイングヴェイ」という愛称で呼ばれることもあります。

使用機材

現在、マカパインはアイバニーズ製の6弦、7弦、8弦ギターを使用しています。アンプはヒュースアンドケトナー製のスタックを使用しています。過去には、B.C.リッチ、ワッシュバーン、カーヴィンなどのギターも使用していました。カーヴィンと契約し、プラネット・エックスで活動していた頃から7弦ギターを使用しています。

ディスコグラフィー

ソロ・アルバム
『エッジ・オブ・インサニティ』 (1986年)
『マキシマム・セキュリティ』 (1987年)
『フリーダム・トゥ・フライ』 (1992年)
『マッドネス』 (1993年)
『プリモニション』 (1994年)
『イヴォルーション』 (1995年)
『ヴァイオレント・マシーン』 (1996年)
『マスター・オブ・パラダイス』 (1999年)
『クロマティシティー』 (2001年)
『トニー・マカパイン』 (2011年)
Concrete Gardens (2015年)
『デス・オブ・ローゼズ - 薔薇に死す -』 (2017年)
ライブ・アルバム
『ライヴ・インサニティ』 (1997年)
コンピレーション・アルバム
* Collection: The Shrapnel Years (2006年)

その他、ヴィニー・ムーア、M.A.R.S.、プラネット・エックス、キャブ、リング・オブ・ファイア、Devil's Slingshot、Seven The Hardwayなど、多数のプロジェクトに参加しています。

トニー・マカパインは、その卓越した音楽性と演奏技術で、多くのギタリストに影響を与え続けています。

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