トマス・ホランド (初代サリー公)

初代サリー公 トマス・ホランドの生涯

初代サリー公・第3代ケント伯トマス・ホランド（1372年 - 1400年）は、イングランドの貴族であり、リチャード2世の治世において重要な役割を果たしました。彼は第2代ケント伯トマス・ホランドとアリス・フィッツアランの長男として生まれ、父方の祖母はジョーン・オブ・ケント、そしてリチャード2世は叔父にあたるという、王室と深い繋がりを持つ人物でした。

リチャード2世の側近として

父と叔父であるハンティンドン伯ジョン・ホランドがリチャード2世に重用されたことから、トマスもまた側近として引き立てられました。1397年に父が亡くなると、彼は爵位を継承し第3代ケント伯となります。同年、リチャード2世は反対派貴族を処刑した後、トマスを新設されたサリー公に叙爵しました。これは、彼に対するリチャード2世の期待と信頼の表れと言えるでしょう。

没落と反逆

しかし、1399年にクーデターが発生し、リチャード2世が廃位されると、トマスの運命は暗転します。新たに即位したヘンリー4世は、彼からサリー公の爵位を取り上げ、元のケント伯に戻しました。この処遇に不満を抱いたトマスは、叔父やソールズベリー伯ジョン・モンタキュートらと共謀し、1400年1月の公現祭にヘンリー4世暗殺を計画します。しかし、この計画は事前に発覚し、トマスは民衆に捕らえられ、処刑されるという悲劇的な結末を迎えました。

ホランド家の終焉と再興

トマスには、第2代スタッフォード伯ヒュー・ド・スタッフォードの娘ジョーンとの間に子供がいませんでした。そのため、ケント伯位は弟のエドマンドが継承しましたが、彼もまた子供がないまま1408年に亡くなり、ホランド家本家は断絶しました。しかし、トマスと共に処刑された叔父の遺児ジョンが、後にエクセター公位を与えられ、分家が再興を果たすことになります。

初代サリー公トマス・ホランドの生涯は、王室との繋がり、栄光、そして没落という、波瀾万丈なものでした。彼の運命は、当時のイングランドの政治情勢に大きく左右され、その興亡は歴史の大きな流れの中で翻弄された一人の貴族の姿を浮き彫りにしています。

参考文献
森護『英国王室史話』大修館書店、1986年。
青山吉信編『世界歴史大系 イギリス史1 -先史～中世-』山川出版社、1991年。
* トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

もう一度検索