トヨタ・クラウンコンフォート

トヨタクラウンコンフォート：タクシー専用セダンの歴史

トヨタクラウンコンフォートは、トヨタ自動車が製造・販売していたセダン型の商用車です。タクシー用途に特化して開発され、「クラコン」という愛称でも親しまれていました。この車両は、長年にわたり日本のタクシー業界を支え、その堅牢性と実用性から多くのドライバーに愛されました。

タクシー専用設計

クラウンコンフォートは、タクシーとしての利用を最優先に考えた設計が施されています。従来のクラウンと比較して、後部座席の窓枠が垂直に近く、マフラーが左側に配置されているなどの特徴があります。これにより、乗客の乗り降りがしやすく、タクシーメーターや無線機などの機器を設置するためのスペースが確保されています。また、後部座席の寸法やトランク容量を最大限に確保し、タクシー業務に必要な機能を備えています。

基本構造と特徴

「クラウン」という名前がついていますが、ベースはX80型マークIIセダンです。姉妹車のコンフォートと同様に、タクシー業務に適した設計がされています。Bピラーの位置は左右対称で、バンパーは修理しやすいように上下2分割式となっています。外装部品には、台湾製の補修用社外品が流通しており、タクシー専用車としての特殊な事情に対応しています。

ボディ構造はコンフォートとほぼ同じですが、クラウンコンフォートはホイールベースを延長し、全長を4,695mmとして中型タクシーに対応させています。フロントグリルやホイールキャップはクラウンのデザインを意識したものとなっており、高級感も演出されています。

2008年8月にはエンジンがOHVの3Y-PE型からDOHC・VVT-iの1TR-FPE型に変更され、出力が向上しました。海外では香港、マカオ、シンガポールでも販売され、特にシンガポールではディーゼルエンジンが採用されました。

グレード構成

グレードは、直列4気筒エンジン搭載のスタンダード、デラックスAパッケージ、デラックスの他、直列6気筒エンジン搭載のスーパーデラックス、スーパーデラックスQパッケージが用意されていました。スーパーデラックス系は主に個人タクシー向けで、クラウンセダンのモデルチェンジに伴い廃止されました。フェンダーミラーが基本仕様ですが、ドアミラー仕様も存在し、特注で装着されることもありました。

歴史

1995年 12月にYS130クラウン営業車の後継として登場しました。その後、幾度かの改良を経て、2018年まで生産が続けられました。

1995年: YS130クラウン営業車の後継として登場。
1997年: フロントグリルの王冠エンブレムが金メッキに変更。
1999年: 平成10年排出ガス規制に適合。
2000年: 衝突安全ボディGOAを採用。ステアリングホイールのデザイン変更。
2001年: スーパーデラックスなどのグレード廃止。エアコン標準装備。
2002年: 運転席エアバッグ、ABSを全車標準装備。
2004年: 平成17年排出ガス規制に適合。ヘッドライトレベリング機構などを標準装備。
2008年: エンジンを1TR-FPE型に変更。15インチホイールを標準装備。
2010年: LPG燃料冷却装置を設定。エンジン出力が若干ダウン。
2012年: プラズマクラスターを全車に採用。リアシートの安全性を強化。
2013年: VSC&TRCを標準装備。メーター照度コントロール機能を追加。
2018年: 生産終了。

特装車

トヨタにはTECSという特装車シリーズがあり、クラウンコンフォートにも特別な仕様が存在しました。

ウェルキャブ: 助手席または後部座席が回転する仕様で、高齢者や身体の不自由な方のタクシー利用をサポート。
ブライダルカー（スイングルーフ）： 結婚式に向かう花嫁が乗り降りしやすいように、後席左側の屋根が開く仕様。

その他

クラウンコンフォートは、トヨタ店で販売されていました（東京地区では東京トヨペットでも併売）。

トヨタ・クラウンコンフォート