トヨタ・マークII

トヨタ・マークII：日本の自動車史を彩る名車

概要

トヨタ・マークIIは、1968年から2004年まで製造されたトヨタ自動車の高級乗用車です。クラウンとコロナの中間をねらう車種として登場し、世代を重ねるごとに車体の大型化と高級化が進みました。1980年代後半にはチェイサー、クレスタとともに「マークII兄弟」として一世を風靡し、ハイソカーブームを牽引する存在となりました。高い信頼性と耐久性から、タクシー、ハイヤー、教習車、警察車両など業務用車両としても広く利用され、その高い人気と知名度を確立しました。また、FRレイアウトと扱いやすいボディサイズ、そして十分なパワー（特に4代目以降）を兼ね備えていたことから、チューニングカー、特にドリフト競技のベース車両として人気を博しました。


初代（T60/70型、1968年-1974年）

急増する自家用車需要に応えるべく、コロナをベースに開発された初代マークII。当初はコロナのフルモデルチェンジとして企画され、1600ccと1900ccのエンジンを搭載したセダンとハードトップがラインナップされました。1900ccモデルは、クラウンに次ぐ高級車として位置づけられました。また、ピックアップトラックも設定されており、これはマークIIシリーズ唯一のトラックモデルとなりました。発売当時のCMソング「すてきなパパ、きれいなママ」は、当時の人々の記憶にも深く刻まれています。1969年には、1900cc DOHCエンジンを搭載した高性能モデル「GSS」が追加され、トヨタ1600GTの後継モデルとしても注目を集めました。


2代目（X10/20型、1972年-1976年）

2代目はボディサイズの大型化と、クラウンからの移植である6気筒エンジンの搭載が大きな特徴です。ライバルである日産・スカイラインGTへの対抗策として、6気筒エンジンを搭載した「Lシリーズ」が追加されました。この代から正式名称が「トヨタ・マークII」となり、コロナの名称はカタログなどに痕跡を残すのみとなりました。しかし、レジャー・遊びのセグメントに位置づけられた戦略が裏目に出てしまい、小型上級車市場の拡大に対応できず、シェアは減少しました。


3代目（X30/40型、1976年-1980年）

販売不振だった2代目を反省し、「堅気になろう」を開発コンセプトとした3代目。デザインはアメリカ車の影響を受けた、シンプルな2灯式ヘッドライトが特徴で、「ブタ目」という愛称で親しまれました。この代では、排出ガス規制に対応するため、ボディタイプに関わらず型式が規制内容によって決められるようになりました。最高級グレードとして「グランデ」が登場し、初めて3ナンバーサイズの2600ccモデルも設定されました。また、この代からチェイサーとクレスタが姉妹車として登場します。輸出仕様のクレシーダもこの代から設定されました。


4代目（X50/60型、1980年-1984年）

直線基調のデザインを採用し、2ドアハードトップが廃止され代わりにセンターピラーを持つ4ドアハードトップが登場。アルミ製直列6気筒と直列4気筒エンジンが搭載され、2800ccモデル「2800グランデ」も設定されました。この代では、ついに「コロナ」の名称が完全に廃止され、広告やCMでも「マークII」のみで呼ばれるようになりました。また、スポーツモデルとして「GT」が設定されました。販売の中心はセダンからハードトップに移行しました。この世代よりクレスタが登場し、チェイサーと合わせて「マークII三兄弟」と呼ばれるようになります。


5代目（X70型、1984年-1997年）

正式に車名が「トヨタ・マークII」となり、コロナから完全に独立したモデルとなりました。キャッチコピーは「美しき正統」。ボディタイプはセダン、ワゴン、ハードトップの3種類。ハードトップは販売の主力となり、セダンはタクシーや教習車として多く使用されました。この代では、日本初のツインカム・ツインターボエンジン「GTツインターボ」を搭載したモデルが登場しました。バンとワゴンは1997年まで生産されましたが、ワゴンはマークIIクオリスに、バンはカルディナバンにモデルチェンジしました。


6代目（X80型、1988年-1996年）

この代よりガソリンエンジンが全てDOHC化されました。スーパーチャージャー搭載モデルや、大幅に改良されたシャーシ、高級感あふれる内装など、多くの改良が加えられました。全長と全幅がクラウンセダンと同サイズとなり、車格が事実上クラウンに匹敵するようになりました。ハードトップは車高が低くなったため、後部座席の居住性が課題となりました。セダンは、企業ユーザーやシニア層に人気があり、タクシーや教習車などにも多く採用されました。


7代目（X90型、1992年-1996年）

日本国内専用モデルとなり、全車が3ナンバーサイズとなりました。バブル崩壊の影響を受け、コスト削減が図られました。しかし、安全性向上には力を入れており、全車に運転席エアバッグが標準装備されました。この代からはスポーツモデルが「ツアラー」と改名されました。


8代目（X100型、1996年-2001年）

バブル崩壊後の厳しい経済状況の中で登場したモデル。コスト削減の影響は各所に及んでいましたが、安全性向上には注力されており、運転席・助手席エアバッグ、ABSが全車標準装備となりました。居住性の向上、丸みのあるデザインから直線基調のデザインへの回帰、ツアラー系のスポーツモデルにはトルセンLSDが採用されるなど、改良点も数多くありました。


9代目（X110型、2000年-2004年）

4ドアハードトップから4ドアセダンに変更。姉妹車であったチェイサー、クレスタは廃止され、ヴェロッサが登場しました。歴代で最も背の高いボディとなり、ヘッドライト、テールライトも縦型に変更されボリューム感のあるデザインとなりました。販売台数は過去のモデルほどの成功には至りませんでしたが、室内空間の広さなどが評価されました。2004年、後継車マークXの登場と共にマークIIは36年の歴史に幕を閉じました。


ステーションワゴンモデル

マークIIクオリス (1997年-2002年)：カムリグラシアをベースとした前輪駆動モデル。
マークIIブリット (2002年-2007年)：9代目マークIIと共通のシャシを持つ後輪駆動モデル。

車名の由来

「コロナをよりスポーティに、より高級化した車」というコンセプトから「マークII」と命名されました。イギリス車のモデルチェンジやグレード変更の手法を参考に命名されたとされています。


ディーラー

原則としてトヨペット店での取り扱いでしたが、地域によっては東京トヨタ、大阪トヨタ（現大阪トヨペット）、沖縄トヨタ（現沖縄トヨペット）でも販売されていました。


マークIIは、長きにわたって日本の自動車文化に貢献した名車と言えるでしょう。その歴史、そして人気は、多くのファンに今もなお語り継がれています。

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