トリークルタルト

トリークルタルトとは

トリークルタルト（英語: Treacle tart）は、イギリスの代表的なデザートの一つであり、特にその甘さが特徴的です。このタルトは、ペイストリー生地と呼ばれるクラストに、トリークルと呼ばれる糖蜜シロップを使用した濃厚なフィリングが詰め込まれています。そのため、非常に甘く、「激甘タルト」とのレッテルが貼られることもあります。日本語では「糖蜜タルト」とも称されています。

製法

トリークルタルトの基本的な製法は、ショートクラスト生地を焼き、そこにトリークルで作った特有のフィリングを注ぎ込むというものです。このフィリングは、トリークル（主にゴールデンシロップと呼ばれる糖蜜）、パン粉、レモンの汁やゼストが主な材料となっています。近年のレシピでは、伝統的なパン粉の代わりにアーモンドパウダーを使用することも増えてきました。

このデザートは熱い状態でも、冷やされた状態でも楽しむことができ、多くの人はクロテッドクリームやアイスクリーム、ホイップクリーム、またはカスタードを添えて食べることを好みます。さらに、フィリングには時折卵やクリームが加えられるレシピも見られます。

歴史

トリークルタルトのレシピは非常に長い歴史を有しており、最古の文献記録は19世紀末のイングランドの著者メアリ・ジュウリーによるものです。彼女が書いた料理本の中に、トリークルタルトの作り方が記されています。このことから、このデザートはイギリスの食文化の一部として根付いていると言えます。

類似する料理

トリークルタルトに似た料理としてトリークルブレッドがあります。これはアイルランドで広く親しまれている自家製のパンで、ソーダブレッドにトリークルが使われている点が特徴です。甘さは控えめですが、トリークルの風味がしっかりと感じられます。

文化的な影響

トリークルタルトは、イギリスのコックニーライミングスラングの中で「恋人」という意味も持つ言葉です。このデザートは、文化やエンターテインメントにも大きな影響を与えています。特に1968年に公開されたイギリスのファンタジー映画『チキ・チキ・バン・バン』では、悪役であるチャイルドキャッチャーが地下室から子供たちを誘い出すシーンでトリークルタルトが登場します。彼は子供たちにこのデザートを無料で配ると叫ぶのです。

また、人気の小説「ハリー・ポッター」シリーズにおいてもハリーの好物として登場します。ホグワーツ魔法魔術学校の宴会では、トリークルタルトがしばしば振る舞われ、読者に強い印象を残しています。

出典

Treacle tart recipe by Heston Blumenthal from Times Online (Paid subscription required)
Treacle tart recipe by Nigel Slater from The Guardian

トリークルタルトは、その風味や食文化上の意義から、今日でも多くの人々に愛され続けています。

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