トロイ衡

トロイ衡とは

トロイ衡（トロイこう、Troy weight）は、ヤード・ポンド法における質量の単位系統の一つで、主に貴金属や宝石の計量に使用されます。金衡（きんこう）とも呼ばれます。

常衡では16オンスが1ポンド（約453.59グラム）であるのに対し、トロイ衡では12トロイオンスが1トロイポンド（約373.24グラム）となります。トロイオンスは480グレーンですが、常衡のオンスは437.5グレーンです。両系統でグレーンの大きさは同じで、1グレーンは正確に約0.06479891グラムと定義されています。

現在、トロイ衡の単位で広く使われているのはトロイオンスのみで、金、銀、宝石の計量に使用されています。他のトロイ衡の単位はほとんど使われていません。

語源

「トロイ衡」という名前は、9世紀頃からイギリスの商人が取引していたフランスのトロワに由来すると考えられています。1390年のダービー伯爵（後のイングランド王ヘンリー4世）によるヨーロッパ遠征の報告で、大皿の重さを記述した際に「トロイ」という名前が初めて使われました。

チャールズ・ムーア・ワトソンは、1307年以前に成立した「度量衡法」に記述された"troni ponderacionem"という言葉がトロイ衡の起源であると提唱しています。これは市場を意味する"troni"という言葉に由来し、また"troi"という単語が天秤を意味することも指摘されています。

トロイ衡はタワー衡とも関連しており、現代のトロイ衡の初出は1414年です。

歴史

メートル法が採用される以前、ヨーロッパ各地でさまざまなトロイ衡が使用されていました。オランダ・トロイやパリ・トロイなどがその例で、これらの値には数パーセント程度の差がありました。イングランドでは15世紀に初めてトロイ衡が使用され、1527年には金や銀の計量における公式単位となりました。イギリス帝国の度量衡（帝国単位）は1824年に制度化されましたが、トロイ衡はそれ以前からイギリス単位の一部でした。

今日、広く使用されているトロイ衡は、イギリスの帝国金衡オンスとアメリカの慣用単位で対応するものです。どちらも0.06479891グラムのグレーンを基準としており、480グレーンを1トロイオンスとしています。常衡のオンスは437.5グレーンです。イギリス帝国では19世紀に12トロイオンスのトロイポンドは廃止されましたが、アメリカの慣用単位では今でも使用されることがあります。

起源

トロイ衡の起源は正確には不明ですが、名前はフランスのトロワのシャンパーニュ大市に由来すると考えられています。ただし、単位自体はそれより北に起源があるとされています。イギリスのトロイ衡は、ブレーメンのトロイ衡と値が非常に近い（ブレーメンのトロイオンスは約480.8グレーンに相当）です。

また、イスラム圏のディレム金貨（約47.966グレーン）が起源であるという説もあります。マーシア王オファがディレム銀貨を基準にしたように、イスラムのディレム金貨が基準になったという説です。

単位

トロイポンド

1トロイポンドは12トロイオンスに相当し、5760グレーンに等しく、正確に約373.2417216グラムです。常衡では1ポンドは16オンス、7000グレーンに等しく、正確に約453.59237グラムです。かつては、1トロイポンドの銀をそのまま通貨として使用しており、これが通貨としてのポンドの由来です。

トロイオンス

1トロイオンス（oz t）は正確に約31.1034768グラムです。トロイオンスは常用オンスの約1.09714286倍（正確には192/175倍）であり、トロイオンスの方が約10%大きいです。

ペニーウェイト

1ペニーウェイト（dwt）は24グレーンで、20ペニーウェイトが1トロイオンスと定義されています。1トロイポンドは240ペニーウェイトです。これが、かつての通貨ポンドが240ペンス（pence、単数形はペニー (penny)）であった理由です。ただし、1526年まではイギリスのポンド（質量）はタワーポンドに基づいており、トロイポンドの15/16でした。1971年に1ポンドは100ペンスに改められました。

単位記号dwtのdは、新約聖書にも記載されている古代ローマのコイン、デナリウス (denarius) に由来します（wtはweightの略）。dという記号は、イギリスの通貨の表記にも使われていました。かつてはポンド、シリング、ペンスを£, s, dで表し、例えば6ポンド11シリング8ペンスは£6 11s 8dと記述しました。

トロイグレーン

ミントウェイト（Mint weights）、別名「貨幣鋳造人の衡量 (moneyers' weights)」は、1649年7月17日の議員立法で法制化されました。1グレーンは20マイト (mite)、1マイトは24ドロイト (droit)、1ドロイトは20ペリット (perit)、1ペリットは24ブランク (blank) となります。

スコットランドのトロイ衡

スコットランドでは、エディンバラ市の金細工師の組合が16の倍数の系を使用しました。16ドロップ (drop) で1トロイオンス、16トロイオンスで1トロイポンド、16トロイポンドで1トロイストーンとなります。スコットランドでは、他の貴金属や宝石の測定方法もありましたが、金や銀については上記の16の倍数の系が一般的でした。スコットランドのトロイポンドは7166グレーンでしたが、イングランドとの合同後は7680グレーンに改められました。1ドロップは30グレーンで、この改正によりオンスとグレーンをイングランドの標準に合わせました。

オランダのトロイ衡

オランダのトロイ衡はマルク (Mark) が基準で、1マルクは8オンス、1オンスは20エンゲル（Engel、ペニーウェイトに相当）、1エンゲルは32アズ (As) となります。1マルクは3798グレーン、約246.084グラムに相当します。

換算

トロイ衡は薬衡でも使われましたが、分割方法が異なりました。

出典

Wikipedia - トロイ衡

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