ドタブカ

ドタブカ（Carcharhinus obscurus）

ドタブカは、メジロザメ属に属する大型のサメで、世界中の温帯から熱帯海域に広く分布しています。長距離回遊を行うことでも知られています。ここでは、ドタブカの生態、形態、分布、人間との関わり、そして保護状況について詳しく解説します。

分類と系統

ドタブカは、1818年にフランスの博物学者シャルル・アレクサンドル・レスールによって記載されました。当初はSqualus属に分類され、体色にちなんでobscurus（ラテン語で「暗い」）という種小名が与えられました。その後、メジロザメ属（Carcharhinus）に移されました。

系統的には、形態系統解析に基づき、ガラパゴスザメとともに「obscurus group」の中心に位置づけられています。このグループには、三角形の歯と背鰭間の隆起を持つハビレ、ペレスメジロザメ、メジロザメ、ヨゴレなどが含まれます。

分布

ドタブカは、世界中の熱帯から暖帯海域に不連続に分布しています。西大西洋、東大西洋、インド洋、西太平洋、東太平洋など、広範囲な海域で見られます。マイクロサテライトとmtDNAの分析からは、インドネシアとオーストラリアの個体群が遺伝的に分離していることが示唆されています。

沿岸域から外洋まで様々な環境に進出し、他のサメ類と生息域が重なることもあります。メキシコ湾北部での追跡調査では、深度10-80mを好むものの、時には400m以深まで潜ることが確認されています。水温19-28℃を好み、河口のような低塩分濃度の場所は避けます。

形態

ドタブカはメジロザメ属の中でも最大級の種であり、通常は全長3.2m、体重160-180kgに達します。最大では全長4.0m、体重347kgに達した記録があります。体は細く流線型で、幅広く丸い吻を持ちます。背面はブロンズから青みがかった灰色で、腹面は白色をしています。体側に淡い筋が伸び、鰭、特に胸鰭下面と尾鰭下葉は先端ほど黒くなります。

生態

ドタブカは食物連鎖の頂点に位置する頂点捕食者であり、個体数は比較的少ないものの、特定の地域では高い密度に達することがあります。コバンザメの宿主としても知られ、様々な寄生生物が確認されています。

成体には天敵はいませんが、幼体はシロワニ、ホホジロザメ、オオメジロザメ、イタチザメなどの餌となります。クワズール・ナタールでは、サメ防御網により大型捕食者が減ったことで、仔魚の生存率が上昇したと考えられています。

摂餌

ドタブカは海底での狩りを好みますが、基本的にジェネラリストであり、あらゆる場所で餌を探します。遊泳魚、底生魚、軟骨魚類、無脊椎動物など、非常に多様な食性を持ちます。時にはウミガメや海獣の死骸、人が捨てたゴミも食べることがあります。

生活史

ドタブカは他のメジロザメ類と同様に胎生であり、妊娠期間は22-24ヶ月と長いです。雌は複数の雄からの精子を蓄えることができ、約3年ごとに繁殖すると考えられています。産仔数は3-16匹で、出産は地域によって時期が異なります。仔魚は浅い潟湖で生まれ、成長の遅いサメとして知られています。性成熟には20年ほどかかり、寿命は40-50年と考えられています。

人との関わり

ドタブカは大型個体が人を襲う危険性があると言われていますが、報告されている事故の件数は少ないです。しかし、南アフリカやオーストラリアのサメ防御網に絡まる事故が発生しています。

鰭はふかひれとして人気が高く、肉や肝臓も利用されます。北米東部、南西オーストラリア、東部南アフリカなどで漁獲されています。

保護状況

IUCNはドタブカの保全状況を、世界的には危急種、南西大西洋・オーストラリアでは準絶滅危惧としています。繁殖力が低いため乱獲の影響を受けやすく、個体数の減少が深刻です。保護のため、漁獲の禁止や釣り場の制限などの対策が行われています。

もう一度検索