ドナルド・スレイトン

ディーク・スレイトン：宇宙への夢を追い続けたパイロット

ディーク・スレイトン（Deke Slayton）、本名ドナルド・ケント・スレイトンは、1924年3月1日、アメリカのウィスコンシン州で生まれました。彼はパイロット、テストパイロット、そして宇宙飛行士として、輝かしいキャリアを築きました。

若き日と軍隊でのキャリア

スレイトンは、幼少期を農場で過ごし、羊や牛の世話、タバコの栽培などを手伝いました。5歳の時には草刈り機で左手の薬指を失うという事故にも遭っています。1942年に高校を卒業すると、第二次世界大戦にアメリカが参戦したことを受け、陸軍航空軍に入隊しました。

飛行士官候補生として訓練を受けたスレイトンは、PT-19、PT-17、AT-6などの機種で飛行訓練を重ねました。当初は単発戦闘機を希望していましたが、多発機の操縦士となり、B-25ミッチェル爆撃機を操縦することになりました。ヨーロッパ戦線では56回の出撃を果たし、帰国後はB-25の教官を務めました。その後、新型爆撃機A-26インベーダーの操縦訓練を受け、太平洋戦線にも参加しましたが、日本の抵抗はほとんどありませんでした。戦後は教官として勤務し、1946年に陸軍を除隊しました。

戦後とテストパイロットへの道

除隊後、スレイトンはミネソタ大学で航空工学を学び、ボーイング社に入社しました。ボーイングではB-52ストラトフォートレスやKC-97ストラトフレイターなどの開発に携わりました。また、空軍予備役にも参加し、T-6テキサンなどの操縦も行っていました。朝鮮戦争の勃発時には、空軍に復帰し、整備士を経て飛行資格を回復し、整備飛行試験士として活躍しました。

1952年、スレイトンは現役の空軍兵士に転属。空軍指揮幕僚学校で教育を受けた後、西ドイツの空軍基地で整備検査官やF-86セイバーの操縦士として勤務しました。このドイツ駐留中にマージョリー・ルニーと結婚しました。その後、念願のアメリカ空軍テストパイロットスクール(TPS)に入学、卒業後はエドワーズ空軍基地のフライトテストセンターでテストパイロットとして数々の機種のテスト飛行を行いました。

マーキュリー計画と宇宙飛行士としての挫折

1959年、スレイトンはアメリカ初の有人宇宙飛行計画であるマーキュリー計画の宇宙飛行士候補に選ばれました。当初は宇宙飛行に興味がなかったものの、選考を受けることに同意。最終的に、他の6人のパイロットと共に「マーキュリー・セブン」の一員となりました。

しかし、高Gトレーニング中に心臓の不整脈が発見され、特発性心房細動と診断されました。このため、アメリカで2回目の有人軌道ミッションであるマーキュリー・アトラス7号の搭乗は中止となりました。スレイトンは、宇宙飛行の機会を失ってしまいました。

NASAでの管理職としての貢献

宇宙飛行の夢を絶たれたスレイトンでしたが、NASAでは重要な管理職として活躍しました。宇宙飛行士室のシニアマネージャーとして、グループ2の宇宙飛行士の選抜、将来のクルーの割り当てを担当。その後、飛行クルー運用の副管理者、管理者へと昇進し、ジェミニ計画やアポロ計画のミッションにおける宇宙飛行士の選定に大きな役割を果たしました。

アポロ1号の火災事故の際には、事故現場近くで作業をしていました。その後、アポロ計画のクルー再編成を行い、アポロ8号のミッションを月周回飛行に変更するという重要な決断を下しました。また、アポロ13号の搭乗員交代劇や、アポロ15号の搭乗員の不祥事への対応など、数々の困難な局面でリーダーシップを発揮しました。

宇宙飛行士への復帰、そして宇宙へ

長年の間、[心房細動]]の治療を続けた結果、1972年にスレイトンは宇宙飛行が可能な状態に回復したと認定されました。そして1975年、アポロ・ソユーズテスト計画]のドッキングモジュールの操縦士として宇宙へ飛び立つことができました。当時51歳で、最年長[[宇宙飛行士の記録を樹立。また、選抜されてから実際に宇宙へ行くまでの期間が最も長かった宇宙飛行士でもあります。ASTPでは、ソ連の宇宙飛行士との歴史的なドッキングを成功させました。

宇宙への旅路から帰還した際に、宇宙船内のミスにより有毒ガスを吸い込み、入院治療をすることとなりましたが、幸いにも健康を取り戻しました。

スペースシャトル計画、そして退職へ

ASTP後、スレイトンはスペースシャトル計画の接近・着陸試験(ALT)の管理を担当。スペースシャトル開発にも貢献しました。スペースシャトルの軌道飛行試験(OFT)の管理も担当し、スペースシャトルの発展に大きく貢献しました。1982年、NASAを正式に退職しました。

NASA退職後の活動

NASA退職後は、民間ロケット打ち上げ会社スペース・サービシスの社長を務めるなど、宇宙開発の分野で活動を続けました。また、エアレースにも関わり、自叙伝を執筆するなど、多岐に渡る活動を行いました。

晩年と死

1992年、悪性の脳腫瘍と診断され、1993年6月13日に69歳で亡くなりました。彼の遺産は、数々の映画やテレビドラマ、書籍などを通して後世に伝えられています。

スレイトンの功績と遺産

ディーク・スレイトンは、宇宙開発の黎明期から活躍し、宇宙飛行士、テストパイロット、そして管理者として、その才能を発揮しました。彼の生涯は、不屈の精神と、夢を追い続けることの大切さを教えてくれます。

受賞と栄誉

スレイトンは、そのキャリアの中で、多くの賞を受賞しています。実験[テストパイロット]]協会(SETP)のジェイムズ・H・ドーリットル賞や、国際航空連盟]のユーリ・ガガーリン・ゴールドメダルなど、数々の栄誉に輝きました。また、アメリカ[[宇宙飛行士殿堂、国際宇宙殿堂、全米航空殿堂、国際航空宇宙殿堂にも殿堂入りしています。

大衆文化での登場

スレイトンは、以下の作品に登場し、その生涯が描かれています。

1983年の映画『ライトスタッフ』
1995年の映画『アポロ13』
1998年のテレビドラマ『フロム・ジ・アース/人類、月に立つ|フロム・ジ・アース_人類、月に立つ』
2018年の映画『ファースト・マン』
* 2020年のテレビドラマ『マーキュリー・セブン』


これらの作品を通して、彼の功績と人となりを垣間見ることができます。

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