ドラア川

ドラア川の概要

ドラア川（ベルベル語名：Derɛa、アラビア語名：درعا、英語名：Draa River）は、モロッコの重要な河川であり、全長は約1100kmに達します。河川の一部はワジと呼ばれ、モロッコで最も長い川とされていますが、下流の約750km部分は大雨の際を除き水が流れない状況です。それでも、上流には貴重なオアシスが広がっており、モロッコ南部にとっての重要な水源となっています。

流域と生態系

ドラア川はアトラス山脈を源流とし、ダデス川及びイミニ川の流れと合わさり、最終的にはサハラ砂漠へと流れ込んでいます。特にワルザザートからザゴラにかけての区間では常に水流があり、この地域は緑豊かなオアシスに覆われています。ここにはナツメヤシの木々が生い茂り、サバクスズメなどの渡り鳥が数多く訪れる重要な生息地となっています。さらに、フェネックやサハラゾリラ、リビアヤマネコ、ヨーロッパジェネット、ユーラシアカワウソなど、さまざまな哺乳類も生息しています。

下流域とは異なり、上流では活発な生態系が見られますが、そこから下るとワジの状態となり、河床はアルジェリアとの国境を形成します。河床は最終的に大西洋へと続き、タンタンの北で海に流れ込みますが、ここには普段は水は存在せず、大雨が降った後に数日間だけ水が流れる状況が続きます。

やがて河口付近にはギョリュウ科の植物であるTamarix amplexicaulisの群落、ヨシ原、さらにはヒユ科の塩生植物のSalicornia perennisが見られます。この特異な環境はウスユキガモやオオフラミンゴ、カワウなどの渡り鳥の生息を支えています。さらに、ジルティラピアや固有種のサハラジネズミ、モグリアレチネズミもこのエリアに生息しています。

環境問題と人々の歴史

ドラア川はその流域内に古くから人々が住む場所であり、オアシスが形成されていました。1054年にはセネガル川流域からやってきたムラービト朝によって支配され、その後、シジルマサを含む周辺のオアシス群がムラービト朝の拠点となります。14世紀になるとサアド族がこの地域に定住し、彼らは兄弟団を形成して勢力を拡大し、16世紀にはサアド朝を建国しました。

しかし、今日ではサハラの乾燥化に伴い、ドラア川の水流は短くなりつつあります。特に近年では、アトラス山脈地域における水利用の増加が影響を与えており、流量が減少し、河川が縮小しているという問題が浮上しています。この地域の自然環境と歴史が交錯し、現代の課題に直面するドラア川の未来は、今後の水資源管理に大きく依存しています。

ドラア川周辺はその美しいオアシスや生物多様性のため、ラムサール条約に登録されており、環境保護の観点からも注目されています。

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