ドレッドノート (原子力潜水艦)

ドレッドノート（HMS Dreadnought, S101）

ドレッドノートは、イギリス海軍が初めて保有した攻撃型原子力潜水艦であり、これまでの海軍技術を集約した重要な艦艇です。同名の軍艦としては7代目にあたるこの潜水艦は、バロー・イン・ファーネスのヴィッカース・アームストロング造船所で建造されました。

建造の背景

原子力推進機関の設計がイギリス海軍で始まったのは1946年でしたが、1952年にはその研究が一時凍結されました。これは、旧ドイツ海軍のヴァルター機関の研究に力を入れていたためです。しかし、アメリカ海軍が1955年に世界初の原子力潜水艦ノーチラスを竣工したことで、イギリス側に衝撃が走りました。ノーチラスの原子力潜水艦としての性能は、当時のイギリス海軍に強い影響を与え、原子力潜水艦の建造に向けた計画を再び進める契機となりました。

イギリス海軍は、ルイス・マウントバッテン伯とサー・ウィルフレッド・ウッズの指導のもと、アメリカの技術を取り入れることで建造時間を大幅に短縮しました。特に、アメリカ海軍作戦部長アーレイ・バークとの良好な関係がこのプロジェクトを推進しました。この協力の結果、原子炉や機関部などの先進的な技術が活用され、「アメリカ区画」とも呼ばれる機関部がドレッドノートに組み込まれることとなりました。

建造と就役

ドレッドノートは1959年6月12日に起工され、1960年10月21日には女王エリザベス2世の臨席のもとで進水しました。1962年12月には原子炉が初の臨界に達し、1963年1月には初の潜航を実施しました。これにより、ドレッドノートは最初期の原子力潜水艦の一隻として正式に就役しました。

設計と特徴

ドレッドノートの設計は、当時のアメリカ海軍のスキップジャック級に影響を受けていますが、独自の特徴もありました。例えば、ドレッドノートは抹香鯨型と呼ばれる船体形状を持ち、耐圧階級の安全性に配慮した複殻構造を採用しました。また、艦首には2001型ソナーや魚雷発射管が装備され、後にイギリスの原潜の標準レイアウトとなります。

運用履歴

1960年代には、ドレッドノートはノーフォークやシンガポールなど様々な港に寄港し、多様な任務を遂行しました。1967年には、漂流していたドイツ船を沈める任務をこない、駆逐艦との共同作戦に参加しました。

しかし、技術的な問題も抱え、1965年には耐圧隔壁に亀裂が見つかり、活動停止を余儀なくされました。1968年から1970年までの大規模な改修工事では、原子炉の炉心も交換され、その後も任務に従事しました。

歴史的評価

ドレッドノートは、原子力潜水艦としての経験とノウハウをイギリス海軍にもたらしましたが、設計上の欠陥やトラブルに悩まされることもありました。1980年には、原子炉の冷却水漏れ事故が発生し、最終的には解役されることとなりました。原子炉は除去され、現在はロサイスで放射能が消失するのを待って保管されています。

この艦は、イギリス海軍の原子力潜水艦の先陣となったものの、その後の艦艇よりも性能は劣っていたと言えます。しかし、ドレッドノートの建造は、イギリスにおける原子力潜水艦の土台を築く重要な役割を果たしました。

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