ドーラン・タイジ

ドーラン・タイジについて

ドーラン・タイジ（Doγolang Tayiǰi、中国語表記: 多郭朗台吉）は、15世紀後半のモンゴルジン＝トゥメト部の重要な統治者であり、彼の活動はモンゴル史の中でも特に注目されています。彼はチンギス・カンの弟にあたるカチウンの血を引く一族の出身で、政治的動乱の中で力を奮い、複雑な権力闘争に関与してきました。最終的にはマンドゥールン・ハーンに命を落とすことになりますが、その軌跡は魅力的です。

経歴と背景

ドーラン・タイジは、カチウン王家の一員として、アルチダイから分封を受けた勢力に属していました。この勢力はヒンガン山脈周辺に広がる遊牧地を持っており、北元時代には明朝の影響を受けた卜剌罕衛として知られていました。また、モンゴルでは「チャガン・トゥメン」とも呼ばれ、彼の活動はこの地域でのオイラトとの戦にも関わっています。

1440年代から50年代にかけて、オイラトのエセンがモンゴルを征服し、その結果、遊牧集団の移動が活発になりました。彼の活動は、主にノーン川流域から南下したウリヤンハイ三衛などの集団の中で表れました。このような中、1454年にエセンが暗殺されると、モンゴル各地では有力者たちが自立し始め、権力争いが激化しました。

政治的展開

ドーラン・タイジは、同じく有力なボライ・タイシと連携し、マルコルギス・ハーンの暗殺を実行しました。この事件は、『蒙古源流』などの史料にも言及されており、ドーラン・タイジが主導したとされています。弑逆後、ボライとドーラン・タイジは新たな同盟を結び、モーリハイの勢力に対抗しました。モーリハイは直ちにボライを倒し、モーラン・ハーンを擁立しましたが、この時期に外部からの脅威も増大しました。

成化元年（1465年）、ドーラン・タイジは明朝に使者を送り、自らの地位を確立しようとしましたが、彼の要求は拒否されました。以降も頻繁に明朝に使者を派遣し、彼の存在感を示しました。1470年代には、ベグ＝アルスラン・タイシと接触し、明朝の警戒を引き起こす事態に至りました。

最期と影響

最終的に、1475年にマンドゥールン・ハーンが即位し、彼は補佐していたドーラン・タイジを含む有力な者たちに対抗しました。マンドゥールン・ハーンが反撃に出た結果、ドーラン・タイジは命を落とし、その部族は彼を失うこととなりました。この後、トゥメト部はドーラン・タイジの血統を離れ、トゥルゲン一族による統治が始まることになります。

ドーラン・タイジの人生は、モンゴルの歴史の変遷を映し出すものであり、当時の権力関係や戦争、同盟の複雑さを示しています。彼の存在は、後のモンゴルの政治情勢にも多大な影響を与えました。

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