ナイジェリア航空2120便墜落事故

ナイジェリア航空2120便墜落事故

1991年7月11日、サウジアラビアのジッダで発生したナイジェリア航空2120便の墜落事故は、261人全員が犠牲となる大惨事となりました。この事故は、メッカへの巡礼から帰国するイスラム教徒を乗せたチャーター便（ハッジ・フライト）として運航されていました。

事故の概要

事故機は、カナダのネーションエアからウェットリースされたダグラスDC-8-61型機でした。離陸滑走中に左主脚のタイヤが破裂したことが、事故の直接的な原因です。タイヤの空気圧不足が事前に判明していたにもかかわらず、整備が適切に行われなかったことが、この事故の背景にありました。

離陸直後、機体は異音と振動に見舞われ、乗員はタイヤの異常に気づきました。しかし、離陸は強行され、着陸装置を格納した際に、破裂したタイヤの残骸が発火し、機内火災が発生しました。火災は急速に拡大し、油圧系統や電気系統を焼き、ついには客室の床まで燃え尽きました。乗客の中には、燃え盛る機体から投げ出される者もいました。

機長は緊急事態を宣言し、空港への帰還を試みましたが、火災による機体の損傷は深刻で、滑走路手前で墜落、乗員乗客全員が死亡しました。

事故の詳細と原因

事故の根本的な原因は、ネーションエアによる整備不良と、出発を強行した運航管理者の判断にありました。事故の4日前、左主脚のタイヤの空気圧不足が確認されましたが、運航管理者は出発遅延を避けるため、タイヤの整備を拒否しました。さらに、整備記録の改ざんも発覚し、会社の利益優先の姿勢が明らかになりました。

事故機は離陸滑走中に、空気圧不足のタイヤが過負荷と摩擦熱により破裂。破片が発火し、格納された主脚を通じて機内へ火が回りました。この火災は、操縦系統を破壊し、機体の制御を困難にしました。管制官も混乱し、事故機の状況を把握するのが遅れました。

国家運輸安全委員会（NTSB）は、乗員がタイヤの異常に気づいた時点で離陸を中止すべきだったと指摘。また、交信記録における管制官の混乱と併せ、クルー・リソース・マネジメント（CRM）の欠如も問題視しました。

事故の影響

この事故は、ネーションエアの安全管理体制の不備を露呈させ、同社は信頼を失い、1993年に倒産しました。また、航空業界全体に安全意識の向上を促す契機となりました。

事故機の履歴

事故機は、1968年にイースタン航空に納入された機体で、その後日本航空での運用を経て、キャピタル・エアに売却されました。1984年にノリスエアに売却され、普段はネーションエアで使用されていましたが、事故当時はナイジェリア航空にウェット・リースされていました。

類似のインシデント

類似の事故として、以下の例が挙げられます。

コンコルド墜落事故: タイヤの破片が燃料タンクを損傷し、火災が発生しました。
スイス航空306便墜落事故: ブレーキの使い過ぎによるタイヤの炎上が原因で、機内火災が発生しました。
アダム航空574便墜落事故: 緊急事態訓練の欠如と整備不良が原因で墜落しました。
ANA1698便: タイヤの空気圧不足を認識しながら、交換せずに離陸し、問題が発覚しました。

これらの事故は、安全管理体制の重要性、整備の徹底、適切な判断の必要性を示しています。

映像化

この事故は、以下の映像作品で取り上げられています。

メーデー!:航空機事故の真実と真相 第9シーズン第10話「DESERT INFERNO」
世界衝撃映像100連発（2015年12月27日放送）

まとめ

ナイジェリア航空2120便墜落事故は、航空安全における教訓を多く含んでいます。整備不良、安全軽視、ずさんな判断が重なった結果、261人もの命が失われたこの悲劇は、二度と繰り返してはなりません。この事故を教訓に、航空業界はより一層の安全意識と、徹底した安全管理体制を確立していくことが求められています。

出典:
デビッド・ゲロー 著、清水保俊 訳『航空事故』（増改訂）イカロス出版、1997年。ISBN 4-87149-099-8。
https://asn.flightsafety.org/asndb/325739

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