ナオジョテ

ナオジョテ（Navjote）とは

ナオジョテは、ゾロアスター教における入門式であり、特にインドのパールシーの間で重要な儀式とされています。この儀式は、ゾロアスター教徒として生まれた者の通過儀礼としてだけでなく、他宗教からの改宗を認める立場の人々にとっては入信の儀式としても機能します。

儀式の概要

ナオジョテは、入信者が純潔と新生を象徴する「クスティー」と呼ばれる白い紐と、「スドラ」という白い肌着を授与される儀式です。これは、バラモン教の入門儀式と類似する点もありますが、ナオジョテは男子だけでなく女子も対象とする点が異なります。ゾロアスター教徒の子弟は、通常7歳から11歳、または12歳頃までにこの儀式を受けますが、儀式の意味を十分に理解できない場合は15歳まで延期することも可能です。ただし、15歳になってもナオジョテを受けないことは罪とされています。

儀式では、クスティーとスドラを身につけ、ゾロアスター教の教義と道徳を守ることを誓います。クスティーとスドラは、ゾロアスター教徒の証として、入浴時以外は生涯身につけることが義務付けられています。

儀式の詳細

儀式は、祭火、花束、木の実、米などが用意された場所で行われます。沐浴を済ませた入門者は、所定の席につき、司祭を含む5人の僧侶が儀式に参加します。司祭は入門者の目の前に、残りの僧侶は四方を取り囲むように位置します。儀式中、僧侶たちは「アフナ・ワルヤ呪」を唱え、「パテート・パシェーマーニ」という祈りを捧げ、時には聖典アヴェスターの『ヤシュト書』を読み上げます。入門者も、僧侶の唱える間、アフナ・ワルヤを唱え続けます。その後、司祭は起立し、入門者にスドラとクスティーが渡され、共に「ディン・ノー・カルモー」という信仰告白を行い、最後に皆でアフナ・ワルヤを唱和しつつ、入門者にスドラを着させます。

ナオジョテの宗教的・社会的意義

ナオジョテは、ザラスシュトラの教えに従い、アフラ・マズダーの信徒になることを宣言する儀式です。この儀式には、入門者だけでなく、親族や友人など多くの人が参加し、ナオジョテを終えた入門者を祝福します。特にパールシー社会では、その規模が100人、時には500人以上にもなることがあります。ナオジョテは、宗教的な意味だけでなく、コミュニティの一員として認められるという社会的な意味も持っています。

ナオジョテの歴史

ゾロアスター教は、元々は外部からの改宗を認めていましたが、イラン帝国（ペルシア帝国）が拡大し、異文化に触れる中で、イラン人としてのアイデンティティが危機に瀕したため、血、土地、言語、宗教の全てを満たすことが「イラン人・ペルシャ人」の条件となり、他宗教からの改宗は表向きは無くなりました。サーサーン朝がイスラム勢力によって滅亡すると、ゾロアスター教は勢力を失い、ナオジョテは、この衰退期に発展・確立したと考えられています。現在、ナオジョテで行われる信仰告白も、サーサーン朝以前には存在していませんでした。ナオジョテは、宗教と信仰を存続させるための重要な手段として整備されたのです。

他宗教者のナオジョテ（入信・改宗）

現代では、他宗教者のナオジョテを認めるかどうか、またゾロアスター教徒と他宗教者との間に生まれた子供の改宗を認めるかどうかは、ゾロアスター教徒、特にパールシー共同体の間で大きな問題となっています。一部のゾロアスター教徒は、他宗教からの改宗を認めないスタンスを固持していますが、一方で改宗を認める人々もおり、その結果、改宗したゾロアスター教徒は200万人にも上るとされています。保守派と改革派は、それぞれのアヴェスターに基づいた解釈を正統なものとみなしています。

ナオジョテは、ゾロアスター教の信仰と文化を次世代に継承するための重要な儀式であり、その歴史と現代的な意義は、複雑な背景と議論を含んでいます。

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