ナジーブ・ハーン

ナジーブ・ハーンの生涯と業績

ナジーブ・ハーン（生年不詳 - 1770年10月30日）は、インド北部、特にローヒルカンド地方で活躍したアフガン系ローヒラー族の族長です。彼はムガル帝国の宰相として重要な政治的役割を果たし、またアフマド・シャー・ドゥッラーニーと同盟を結ぶことで自身の地位を高めました。彼の名にちなんで現在のウッタル・プラデーシュ州ビジュノール県に存在するナジーバーバードが1740年代に建設されたことからも影響力の大きさが伺えます。

ナジーブ・ハーンの初期の人生

ナジーブ・ハーンの若い頃については詳細がほとんど知られていませんが、彼はアフガニスタンのユスフザイ族出身です。1739年に彼はスワービーから叔父の支配するビシャーラトナガルに移住しました。この地域でナジーブ・ハーンはビジュノールを統治し、1740年代には自身の名を冠した都市ナジーバーバードを築きます。

1740年頃、アリー・ムハンマド・ハーンがローヒルカンド地方の大部分を掌握した際、ナジーブ・ハーンもその北部を領有することになりました。同時に「ナジーブ・ウッダウラ」の称号を得て、これは彼の別名として知られるようになります。これによって、彼はローヒラー族の北部を支配し、事実上独立的な立場を確立し始めました。

アフマド・シャー・ドゥッラーニーとの同盟

1752年、ムガル帝国の宰相サフダル・ジャングはナジーブ・ハーンの台頭に脅威を感じ、彼を討伐するためにマラーターに介入を依頼しました。マラーターの侵攻を受けたナジーブ・ハーンは、抵抗力を高めるためにアフガン王朝のドゥッラーニー朝と結びつくことを決意します。この同盟は、彼の影響力をさらに増す結果となりました。

ムガル帝国における地位の確立

ナジーブ・ハーンはムガル帝国において重要な役割を果たし、デリーの知事としても名を馳せました。1756年にはガーズィー・ウッディーン・ハーン宰相がローヒラー族によるラホール占拠を打破しようとしましたが、ナジーブ・ハーンはアフマド・シャー・ドゥッラーニーに連絡し、同年12月に彼が進軍することになります。これにより、ナジーブ・ハーンはデリーの実権を握るに至ります。

ナジーブ・ハーンの指導の下、ローヒラー族の軍はデヘラードゥーンを侵略し、約10年間その地域を支配しました。アフマド・シャー・ドゥッラーニーがデリーを占拠した際、ナジーブ・ハーンは帝国内での彼の重要性が高まったのです。

マラーターとの戦争

デリー占拠の知らせはマラーター王国にも広まり、宰相バーラージー・バージー・ラーオはデリーへ派遣された弟ラグナート・ラーオを送りました。1757年1月、ナジーブ・ハーンの軍はラグナート・ラーオに対抗し、戦闘が繰り広げられましたが、数的劣位のため敗北し、ナジーブ・ハーンは撤退を余儀なくされます。この時、ナジーブ・ハーンは身代金をマルハール・ラーオ・ホールカルに支払うことで身の安全を確保しました。

1759年、アフマド・シャー・ドゥッラーニーが再度ラホールへ行き、マラーターの勢力を排除し、その後デリーに進軍します。ナジーブ・ハーンは彼とともに行動し、1761年に行われた第三次パーニーパトの戦いでは4万の兵と70門の大砲を提供するなど、重要な役割を果たしました。

最後の戦いと死

ナジーブ・ハーンは再び帝国の実権を掌握し、ガーズィー・ウッディーン・ハーンを追放して宰相となりましたが、やがてジャート族、特にスーラジュ・マルとの対立が深まります。1763年、彼はスーラジュ・マルを巧妙な策略で討ち取り、バーラトプル軍を混乱に陥れました。

しかし、1768年には健康が著しく悪化し、ダメージを受けた結果、宮廷から追放されます。1770年10月30日、ナジーブ・ハーンはこの世を去り、ムガル帝国の複雑な背景を持つ波乱に満ちた歴史にその名を刻むこととなりました。

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