ラグナート・ラーオ

ラグナート・ラーオ: マラーター王国の野望と挫折

ラグナート・ラーオ（Raghunath Rao, 1734年8月30日 - 1783年12月11日）は、インドのデカン地方にあったマラーター王国における重要な歴史的人物です。彼は第6代宰相（ペーシュワー）として1773年から1774年まで在位し、マラーター同盟の指導者でもありました。ある別名ではラゴーバー（Raghoba）とも呼ばれています。彼の日々は野望に満ちていましたが、その一方で、争いや陰謀に翻弄された人生でもありました。

生涯と北インドへの遠征

ラグナート・ラーオは、宰相バーラージー・バージー・ラーオの弟として生まれ、マラーター同盟の領土を拡大するために北インドへ何度も遠征しました。彼は1753年から1755年にかけて、ジャート勢力に対する攻撃を行い、マラーターに有利な条約を締結して帰還しています。 しかし、1750年代にはアフガンのドゥッラーニー朝がパンジャーブ地方に進出し、これがマラーター同盟との対立を引き起こしました。

1757年1月、ラグナートはムガル帝国のデリーに入り、同年のうちにデリー周辺地域を略奪しました。バーラージー・バージー・ラーオは彼をデリーに送ったものの、アフマド・シャー・ドゥッラーニーとの戦いには勝利することができませんでした。その後、1738年3月にはパンジャーブのラホールを奪取し、その後もアトックやペシャーワルを制圧します。彼はこれを達成した後、プネーへと帰還しました。

宰相位への野望と内乱

しかし、1759年、アフマド・シャー・ドゥッラーニーのパンジャーブ侵攻があり、1761年にはマラーター軍がパーニーパットで大敗しました。この逆境の中、宰相のバーラージー・バージー・ラーオが亡くなると、ラグナート・ラーオは宰相位を希求するようになります。彼と新宰相のマーダヴ・ラーオとの間には対立が生じ、1762年に内乱が勃発。ラグナートはニザーム王国からの援助を受けましたが、マーダヴから敗北し、降伏を余儀なくされます。

権力の追求と逮捕

その後も彼の野望は衰えることなく、1768年には再び打倒を企てましたが、マーダヴ・ラーオに逮捕されてしまいました。彼の妻や側近の影響を受けて、復権を狙うも、逆に逮捕に至る結果となりました。1772年には一度逃げるも再逮捕されるなど、権力を巡る闘争は続きました。

権力の掌握と暗殺の謀略

1772年11月、マーダヴ・ラーオが他界すると、ラグナートは彼の弟ナーラーヤン・ラーオの摂政に就任します。しかし、野望を捨てきれずにいた彼は、ナーラーヤンの暗殺を企て、1773年8月30日に実行に移しました。この暗殺は彼の運命を大きく変える出来事となりました。このような背景の中、ラグナートは同盟の宰相に就任しますが、反響は決して良好ではなく、彼の権力基盤は脆弱なままでした。

廃位と第一次マラーター戦争

彼の行動はすぐに知れ渡り、唐突に彼は10月に宰相の地位を得るものの、ナーナー・ファドナヴィースらに追及されることになりました。1774年には未亡人が息子を出産したため、彼は宰相位を奪われてしまいました。この後、ラグナートはイギリスと結託してスーラト条約を結び、戦争に突入します。これが第一次マラーター戦争の始まりとなりましたが、彼は復権することは叶わず、1782年に戦争が終結します。

死とその後

1783年12月11日、ラグナート・ラーオは失意のうちに他界しました。彼の妃であるアーナンディー・バーイーも1794年に死去しています。彼の死後、王国の宰相にはその息子が即位することになり、ラグナート・ラーオの波乱万丈な人生は歴史に名を刻むこととなりました。

もう一度検索