ナプロキセン

ナプロキセンについて

ナプロキセン（naproxen）は、主に消炎、鎮痛、解熱などの作用を持つ非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の一種です。この薬は芳香族カルボン酸に分類され、光学活性化合物であるため、特定の構造を持つエナンチオマーが生理活性を示します。特に、(S)-(+)体のエナンチオマーが有効とされています。

ナプロキセンの合成方法

ナプロキセンの合成には、光学分割法や不斉水素化法等の手法が用いられています。

光学分割法

ナプロキセンを工業的に大量生産する方法として、光学分割が行われます。この過程では、2-ナフトールを原料に用いて、以下の段階を経てナプロキセンのラセミ体が生成されます。

• - 二臭素化
• - 部分還元
• - メチル化
• - カップリング反応

この方法で得られた(S)-ナプロキセンは高い光学純度を持ち、特定のアミンと反応させることで不溶物が生成され、さらに精製されます。この手法は「Pope-Peachey法」と呼ばれています。

不斉水素化法

S体の2-アリール置換プロピオン酸は、不斉合成のターゲットとしても重要です。1987年、野依らは特定のルテニウム錯体を用いた不斉水素化に成功し、(S)-ナプロキセンを高い選択率で得て、合成の効率を向上させました。

医薬品としての利用

ナプロキセンは1976年から市販され、さまざまな商品名で販売されています。日本では医療用として使用されていますが、アメリカなどでは一般用医薬品としても流通しています。代表的な商品名は「アリーブ」や「ナイキサン」などです。

作用機序

ナプロキセンの効果は、アラキドン酸からプロスタグランジンへと至る代謝経路において、シクロオキシゲナーゼ（COX）活性を阻害することで発揮されます。これにより、抗炎症作用が得られます。

副作用と相互作用

ナプロキセンは腎機能に影響を及ぼすことがあり、特にナトリウムの排泄を抑え、血圧を上昇させる可能性があります。そのため、利尿薬やACE阻害薬、β遮断薬との併用には注意が必要です。また、リチウム製剤と同時に使用する場合は、リチウム中毒を引き起こす可能性があるため、慎重に行うべきです。

アスピリンなど他のサリチル酸系薬剤との併用は、薬効が減少する恐れがあるためすすめられません。さらに、抗凝固薬との併用では出血のリスクが高まるため、慎重が必要です。アメリカ心臓協会（AHA）は、心血管疾患の既往がある患者に対して非サリチル酸系NSAIDs、特にナプロキセンの投与を推奨しないという声明を出していますが、ハーバード大学医学院は、ナプロキセンがリスクが低いNSAIDsであると報告しています。

まとめ

ナプロキセンは、鎮痛、解熱、抗炎症作用を持つ安全性の高い医薬品です。その合成は複雑ではありますが、さまざまな方法を用いることで効率的に生産されています。使用の際は副作用に留意しながら正しく利用することが重要です。

もう一度検索