ナポリ音楽院の人物一覧

ナポリ音楽院に連なる音楽家たち

南イタリアの中心都市、ナポリは古くから音楽文化が栄えた地として知られています。特に音楽教育においては長い歴史を持ち、多くの才能を世に送り出してきました。その中でも代表的な存在の一つがナポリ音楽院です。この記事では、この由緒ある音楽教育機関に深い関わりを持った様々な分野の人物たち、すなわち教育者としてその礎を築いた教職員や、学び舎で研鑽を積み世界へと羽ばたいた卒業生に焦点を当て、彼らが音楽院とイタリア、そして世界の音楽史にどのように貢献したのかを概観します。

音楽院で教鞭を執った著名な人物たちの中には、卓越した演奏家や理論家が名を連ねています。例えば、リストやショパンと同時代を生きた高名なピアニスト、ジギスモント・タールベルクもナポリ音楽院で教えました。また、驚異的なテクニックで知られるピアニストのセルジオ・フィオレンティーノや、オルガン奏者、作曲家として活躍したマルコ・エンリコ・ボッシ、そしてヴァイオリニストであり作曲家のフランチェスコ・マンチーニといった器楽奏者たちも、教育者として後進の指導にあたったことが知られています。作曲家の分野では、対位法やフガに関する著作で知られるニコラ・サーラや、バロック後期の重要な作曲家フランチェスコ・ドゥランテ、さらにはオペラや室内楽、交響曲など幅広い分野で活躍したジュゼッペ・マルトゥッチも、ナポリ音楽院の教育者として歴史に名を刻んでいます。彼らは自身の芸術活動と並行して、未来を担う若い音楽家たちの育成に情熱を注ぎました。

そして、ナポリ音楽院が輩出した卒業生たちのリストは、イタリア音楽の歴史そのものと言っても過言ではないほど豪華な顔ぶれです。特に作曲家の分野では、その数の多さと質の高さが際立っています。オペラ作曲家として今なお絶大な人気を誇るヴィンチェンツォ・ベッリーニを筆頭に、『秘密の結婚』で知られるオペラ・ブッファの巨匠ドメニコ・チマローザ、若くして才能を開花させた『スターバト・マーテル』の作曲家ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ、そして『道化師』でヴェリズモ・オペラを代表する存在となったルッジェーロ・レオンカヴァッロもナポリ音楽院の出身です。他にも、『アンドレア・シェニエ』のウンベルト・ジョルダーノや、歌曲の大家フランチェスコ・パオロ・トスティ、さらにはレオナルド・ヴィンチ、アントワーヌ＝フレデリック・グレスニック、ニコラ・サーラ（教員と卒業生の両方）、アントニオ・サッキーニ、ニコロ・アントニオ・ジンガレッリ、フランチェスコ・ドゥランテ（こちらも両方）、ジュゼッペ・デ・マーヨ、ジュゼッペ・マルトゥッチ（こちらも両方）といった、バロックからロマン派、そして近代にかけてイタリア音楽史を彩った重要な作曲家たちが、この学び舎から巣立っていきました。

演奏家の分野では、前述のセルジオ・フィオレンティーノやフランチェスコ・マンチーニが卒業生としてもリストアップされています。フルート奏者のレオナルド・デ・ロレンツォ、ピアニストのティート・アプレア、マンドリン奏者、作曲家、指揮者としてマンドリン音楽の復興に尽力したカルロ・ムニエルなど、様々な楽器のスペシャリストがいます。声楽家の中からも多くの才能が生まれ、世界のオペラやコンサート会場で活躍しています。

クラシック音楽の枠を超えて、大衆音楽に影響を与えた人物もいます。世界的に有名なカンツォーネ「オー・ソレ・ミオ」の作曲者として知られるエドゥアルド・ディ・カプアもナポリ音楽院の卒業生です。

さらに、指揮者としては、メトロポリタン歌劇場の主要指揮者として活躍したアントニーノ・ヴォットー、ベルリン国立歌劇場などで活躍したエギスト・タンゴ、作曲も行ったマイケル・コスタ、フランコ・カラッチオーロ、フェデリコ・デル・クポロ、ジュゼッペ・パターネといった国際的に活躍した指揮者たちも、ナポリ音楽院で学んでいます。

このように、ナポリ音楽院は教育者としても、そして数多くの優れた演奏家、作曲家、指揮者といった音楽家を輩出する学び舎としても、イタリア音楽史において極めて重要な役割を果たしてきました。このリストは、その豊かな歴史と、音楽院が培ってきた教育の質の高さを物語っています。彼らの功績を知ることは、ナポリ音楽院という機関の偉大さ、そしてイタリアの音楽遺産の深さを理解する上で欠かせません。

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