ナマ語

ナマ語とは

ナマ語（Nama）は、コエ語族に属する言語で、コエコエ語やダマラ語とも呼ばれます。かつては「ホッテントット語」という蔑称で呼ばれていました。主にナミビア、ボツワナ、南アフリカ共和国に居住するナマの人々によって話されています。

この言語は、吸着音を多用する非バントゥー語群の言語であり、コイサン諸語に分類されていたこともあります。しかし、現在ではコエ語族に分類されています。

歴史

ナマ語は、元々ジュー語を話していたハイチョム族が、後にコエコエ語に移行したことで成立しました。コエ語族の言語を話す人々は「コイコイ人」とも呼ばれます。1659年に「ǁHui!gaeb」（後のケープタウン）に上陸したゲオルク・フリードリヒ・ヴレーデが、ナマ語を学んだ最初のヨーロッパ人とされています。

現状

ナマ語は、ナミビアの国民的言語の一つです。ナミビアと南アフリカでは、国営放送がナマ語による番組を制作・放送しています。アフリカには約167,000人の話者がいると推定されていますが、危機に瀕している言語とされています。ケープタウン大学は2019年に語学講座を実施し、2020年9月にはコイサン・センターを開設しました。近年では、学部生向けの学位課程も計画されています。

音韻

母音

ナマ語の母音には、口音の/i e a o u/の5種類と、鼻音の/ĩ ã ũ/があります。/u/は強い円唇母音で、/o/は少し丸みを帯びています。/a/は、/i/または/u/の前では[ə]と発音される異音があります。

声調

ナマ語には、3つまたは4つの声調があります。声調は、/á, ā, à/や/a̋, á, à, ȁ/のように各モーラ（母音と終鼻子音）に付与されます。高母音（/í ú/）には鼻母音（/ń ḿ/）が、中または低母音（/é á ó/）では高音がより高くなります。ナマ語の声調は、文脈によって旋律のように連続変調として組み合わされることがあります。

強勢

文章中では、語彙範疇の単語が文法範疇の単語よりも強い強勢を持ちます。単語の中では、第一音節が最も強く発音され、後続の音節は徐々に弱く、短くなります。

子音

ナマ語には31種類の子音があり、そのうち20種類が吸着音、11種類が非吸着音です。

非吸着音

母音と母音の間では、/p/は[β]、/t/は[ɾ]と発音されます。破擦音は強く気音化され、音韻論的には有機的な終止として分析されます。隣接するコラナ語では、[tʰ, kʰ]となります。D・ビーチによると、当時のコエコエ語には、吸着音を持つ言語での異音の共通再現として、軟口蓋側面放出破擦音[kʟ̝̊ʼ]があったと報告されています。

吸着音

吸着音は二重調音であり、流入音とクリック種、クリック伴音の組み合わせから成ります。これにより、20種類の音素が構成されます。有気吸着音の有気音はしばしば軽いことが多いですが、有気鼻音吸着音より耳障りな音になります。声門吸着音は、気流開放前に停止するため明確に無声音となり、伝統的な綴りでは単純に無声吸着音として転写されます。鼻音要素は、初期位置では聞き取りにくく、有気吸着音の無声鼻音も母音の間にある場合は聞き取りにくいです。外国人には、少し荒々しくない調音の長めの感じに聞こえることがあります。

ティンドールは、ヨーロッパ人学習者は側面吸着音を発音する際に、舌を側面の歯に当てることが多いため、この調音は「ネイティブの耳には過酷で異質」であると指摘しています。しかし、ナマクア族は、舌で口蓋全体を覆い「できるだけ口蓋の奥で」音を出しています。

音素配列

語彙の語根は、2つ（またはまれに3つ）のモーラから成り、CVCV(C)、CVV(C)、CVN(C)の形態をとります。語頭には必ず子音が必要で、中間の子音はw r m n (wはb~p、rはd~t)のみが可能です。語尾にはp, s, tsのみが使用可能です。各モーラは声調を持ち、2番目のモーラは高または中声調のみが可能で、6種類の声調が存在します（高高、中高、低高、高中、中中、低中）。CVVの場合の口腔母音の配列は、/ii ee aa oo uu ai [əi] ae ao au [əu] oa oe ui/となります。鼻母音の配列は、/ĩĩ ãã ũũ ãĩ [ə̃ĩ] ãũ [ə̃ũ] õã ũĩ/となります。舌の位置が高い母音で終わる配列は、他と比較して短く発音され、二重母音や長母音のように聞こえます。声調は曲線状になめらかに発音されます。CVCVの単語は例外が多いものの、同様の母音配列になる傾向があります。母音-鼻音の配列は、非前舌母音（/am an om on um un/）に限られ、これらの声調も曲線状になめらかに発音されます。文法語彙はCVまたはCNで構成され、どのような母音と声調も持ちます。Cは子音または吸着音で、吸着音はNNとはなりません。接尾辞や語根の3番目のモーラはCV、CN、V、Nで、どのような母音と声調も持ちます。-p 1m.sg, -ts 2m.sg, -s 2/3f.sgなど、Cのみの接尾辞も存在します。

言語名別称

ナマ語は、以下のような様々な名称で呼ばれることがあります。

ダマラ語
ダマ語
ホッテントット語（蔑称）
コエコエ語
コイ語
コイコイ語
ナマクア語
Berdama
Bergdamara
Hottentot
Kakuya Bushman
Khoekhoe
Khoekhoegowab
Khoekhoegowap
Maqua
Namakwa
Naman
Namaqua
Nasie
Rooi Nasie
Tama
Tamakwa
Tamma

方言

ナマ語には、以下のような方言があります。

ǂAkhoe
Bondelswarts
Central Damara (Central Dama)
Central Nama
Ghaub Damara
Gobabis
Namidama
Sesfontein Damara
Topnaar

脚注

関連項目

ナマ人
ナマクアランド（グレートナマランド）

外部リンク

Ethnologue report for language code naq （英語） - エスノローグ
コエコエ語の吸着語教材動画

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