ナミシュモクザメ

ナミシュモクザメ (Sphyrna tudes)

ナミシュモクザメは、シュモクザメ科に分類されるサメの一種で、西部大西洋の南米沿岸、具体的にはベネズエラからウルグアイにかけて生息しています。この種は特に濁った水域を好み、体長は通常1.2メートルから1.3メートル程度と小型です。特徴的なのはそのハンマー型の頭部（cephalofoil）で、前縁が弧を描き、中央部と左右に凹みがあります。

サメの体色は金色で、これは主に餌として食べるクルマエビ科やナマズ目の生物が持つ色素によるものです。この色合いは、濁った水中でのカモフラージュとして機能していると考えられます。ナミシュモクザメは胎生であり、雌は毎年5匹から19匹の仔を産みます。

分類の混乱

ナミシュモクザメの分類には複雑さが伴います。1822年にはフランスの動物学者アシル・ヴァランシエンヌがシュモクザメの一種としてZygaena tudesを記載しました。彼の記事では、ニース、カイエンヌ、コロマンデル海岸から得られた標本に基づいています。その後、長い間分類学者たちはこの種をヒラシュモクザメと誤認していました。

1944年には、シュモクザメの一種としてSphyrna bigelowiが記載され、1950年にはEnrico Tortoneseが以前の標本がヒラシュモクザメではなく、実際にはS. bigelowiと同じであることを確認しました。1967年にはCarter Gilbertが、ナミシュモクザメがSphyrna tudesに対応することを指摘し、S. bigelowiをそのジュニアシノニムとしました。これにより、多くの混乱が生じました。

一方で、1981年にはJean CadenatとJacques Blacheがナミシュモクザメのタイプ標本を再調査しましたが、実際にはこれがS. couardiの胎児であったと結論付けました。このため、命名規約に従えば、ナミシュモクザメは再びSphyrna bigelowiの学名を得るべきですが、多くの学者は従来の名前を使用し続けています。

生態と分布

ナミシュモクザメは南アメリカのウルグアイからベネズエラまで広がっているものの、オリノコ川の河口以西では非常に珍しい存在です。また、他の地域からの報告はしばしば誤同定によるものとされており、この種は沿岸の深度5メートルから40メートルの濁った泥の底に生息しています。

このサメは、性や年齢によって群れを作り、特に生後すぐの幼体が浅い海域に見られますが、成体は通常より深い水域に生息します。肉食性であり、幼体は主にクルマエビを捕食し、大型の成体は硬骨魚やその卵を食べる傾向があります。この食生活は、サメの金色の体色の一因とも考えられています。

人間との関わり

ナミシュモクザメは比較的臆病な性格であり、人に危害を加えることはありません。しかし、沿岸漁業においては混獲され、肉が食用とされることが多いです。このため、特にトリニダード島やブラジルの漁業において重要な存在となっています。ですが、乱獲や繁殖力の低さが懸念されており、IUCNによってその保全状況は危急種として認識されています。個体数の減少が報告されており、保護活動や管理の対象とはなっていないのが現状です。

ナミシュモクザメは、私たちの海洋エコシステムに不可欠な役割を果たしています。それにもかかわらず、乱獲や環境の変化により危機的な状況に置かれています。持続可能な漁業と保護の取り組みが急務です。

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