ナム・ドンの戦い

ナム・ドンの戦い

1964年7月6日、南ベトナム北部のナム・ドン前哨基地で発生した、アメリカ軍、南ベトナム軍と北ベトナム軍との間の激戦です。

背景

アメリカがベトナムに本格介入する以前、インドシナ半島の共産化を食い止めるため、アメリカは南ベトナムに軍事顧問団としてグリーンベレー（アメリカ陸軍特殊部隊群）を派遣していました。

グリーンベレーは、南ベトナム政府軍や中央高地の少数民族に対して軍事訓練を実施し、実戦に投入しようとしました。また、北ベトナムの偵察任務を担う偵察部隊も編成していました。

概要

アメリカ陸軍は、ラオス・ベトナム国境を通過するホーチミン・ルート経由で南ベトナムへ侵入する共産ゲリラを阻止するため、南ベトナム北部のトゥアティエン＝フエ省ナムドン県に、有刺鉄線とブービートラップで防御された前哨基地を設置しました。

1964年7月5日の夜、グリーンベレー第5特殊部隊群分遣隊チームA-726の隊員たちは、ナム・ドン基地周辺で小競り合いが発生する可能性を予感していました。明確な情報があったわけではありませんでしたが、隊長のロジャー・ドンラン大尉は、ゲリラの襲撃に備えるよう部下に指示しました。その数時間後、隊長の予感は現実のものとなります。

7月6日午前2時過ぎ、北ベトナム軍はナム・ドン基地に対し、迫撃砲と重機関銃による攻撃を開始しました。当時の基地には、グリーンベレー隊員12名、モンタニヤード（ベトナム中央高地少数民族）の民間不正規戦グループ（CIDG）約300名、その他60名が駐屯していました。対する北ベトナム軍の兵力は約900名でした。

戦闘が開始されると、グリーンベレー隊員と民兵は物陰に身を隠し、激しい砲撃に耐えました。隊長のドンラン大尉は、砲撃によって2度負傷しましたが、陣地内を駆け回り、部下を鼓舞し続けました。

ナム・ドン駐留部隊は、北ベトナム軍による幾度もの攻撃を撃退しました。しかし、この戦闘で数名のアメリカ兵と南ベトナム兵が命を落としました。ドンラン大尉は、負傷しながらも指揮を執り続け、負傷者の治療にあたりました。

夜が明け、北ベトナム軍の攻撃が散発的になると、午前7時頃、アメリカ軍の増援部隊（ヘリ28機、約93名）が到着し、北ベトナム軍は撤退しました。

結果として、兵力で劣るナム・ドン駐留部隊は勝利を収めましたが、チームA-726隊員3名、オーストラリア軍兵士1名、南ベトナム民兵55名が戦死し、65名が負傷しました。

その後

ドンラン大尉は、圧倒的に不利な状況下で、負傷しながらも勇敢な行動と的確な指揮を発揮したとして、アメリカ政府から名誉勲章を授与されました。また、チームA-726からも2名が殊勲十字章を死後追贈され、4名が銀星章、5名が勇敢な行為を示す「V」の記章付き青銅星章を授与されました。

関連項目

ベトナム戦争
ケサンの戦い
* ディエンビエンフーの戦い

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