ナンヨウスギ科

裸子植物のマツ綱に分類されるナンヨウスギ科（学名：Araucariaceae）は、南半球の広範囲に分布する針葉樹の重要なグループであり、マキ科と並んでこの地域の生態系を特徴づける存在です。

形態

この科に属する植物の樹形は非常に多様です。特定の属や種に典型的なシルエットはあるものの、全体として見ると、円錐形、傘状、ピラミッド型など、様々な姿が見られます。この形態の多様性が、観賞用としての人気にもつながっています。

生態

ナンヨウスギ科の樹木は、熱帯から亜熱帯、さらには温帯の一部にかけて分布しています。広葉樹が優占することの多い熱帯雨林のような環境でも、この科の針葉樹が優勢な植生を形成する場合があります。このような現象の一因として、根系と特定の菌類との間に形成される共生関係、すなわち菌根の存在が関わっていると考えられています。菌根菌は、植物の養分吸収を助け、過酷な環境下での生育を可能にするとされています。

人間との関わり

ナンヨウスギ科の植物は、古くから様々な形で人類と関わってきました。

文化的・精神的な重要性: 特にニュージーランドの先住民マオリの人々にとって、ナギモドキ属（Agathis）の巨大な樹木は、深い精神的な意味を持つ存在です。北島には、「森の神」を意味するタネ・マフタや「森の父」を意味するテ・マツア・ナヘレといった、Agathis australis種の特に有名な巨木が崇拝の対象として大切に守られています。
経済的利用: 多くの種が良質な木材を提供します。建築用材や家具材として広く利用されるほか、その独特で力強い、あるいは優美な樹形は、世界各地で観賞用の庭園樹としても高い人気を誇ります。
食糧としての利用: ナンヨウスギ属（Araucaria）のいくつかの種の大きな種子は食用となります。例えば、Araucaria bidwilliiの種子などは、古くから自生地の先住民、例えばオーストラリアのアボリジニや遠く南米のチリに暮らすマプチェ族などによって重要な食糧源として利用されてきました。彼らはこれらの種子を収集し、調理して食用にしていたのです。
樹脂の利用: ナギモドキ属の樹木から分泌される樹脂は「カウリガム」として知られています。特にニュージーランドのカウリ（Agathis australis）から採取される樹脂は、マオリ族によって様々な用途に用いられてきました。新鮮な樹脂はチューインガムのように噛んで楽しむ嗜好品として、また、固まった樹脂は「植物の琥珀」とも呼ばれる美しい素材として、装飾品やワニスなどの加工に利用されました。

分類

ナンヨウスギ科は、主に現生の3つの属と、化石から知られる絶滅属によって構成されています。

ナンヨウスギ属（Araucaria）: 約20種を含み、オーストラリアやその周辺の太平洋の島々、そして遠く離れた南米大陸に隔離分布しています。特にニューカレドニアには14種もの固有種が集中しており、多様性の中心地となっています。
*ナギモドキ属（Agathis）: 約17種が、ニュージーランドから東南アジアにかけての広い範囲に分布しています。この属のいくつかの種は、非常に大きな樹木に成長します。
*ウォレミア属（Wollemia）: ウォレマイ・パイン（Wollemia nobilis）というただ1つの種のみを含む「単型属」です。この種はオーストラリアのニューサウスウェールズ州で発見された「生きた化石」として知られています。
*†アラウカリオキシロン（Araucarioxylon）:* 中生代の地層からのみ発見される化石属であり、現在では絶滅していると考えられています。珪化木としてよく知られています。

もう一度検索