ニコライ・ゴロワノフ

ニコライ・セミョーノヴィチ・ゴロワノフ（1891年1月21日 - 1953年8月28日）は、ソ連の著名な指揮者であり、作曲家としても活躍しました。彼の音楽に対する情熱と、独自の解釈による演奏は、後世に大きな影響を与えています。

生い立ちと音楽への道

1891年、ゴロワノフはモスクワで生まれました。没落したブルジョワ階級の家庭に育ち、1901年にモスクワシノダル聖歌学校を卒業。1909年からは合唱指揮者、作曲家として活動を開始し、シノダル・ホールの指揮者も務めました。その後、モスクワ音楽院に進学し、セルゲイ・ワシレンコとミハイル・イッポリトフ＝イワノフに師事。1914年に卒業しました。

ボリショイ劇場での活躍

1915年、ゴロワノフはボリショイ歌劇場で初めて指揮を執り、その才能を認められて副指揮者として迎えられました。1919年から1928年、そして1930年から1936年には指揮者として、1948年から1953年には主任指揮者として劇場を支えました。ソ連楽壇において最高の評価を受け、ボリショイ歌劇場との関係は長年にわたりました。ソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシネフスカヤは、自伝の中でゴロワノフをボリショイ歌劇場の首席指揮者と呼び、彼の解雇と死について、深い悲しみと共に語っています。

しかし、その才能とは裏腹に、政治的な背景から不遇な時期もありました。ムソルグスキーの歌劇《ボリス・ゴドゥノフ》の録音において、主役の皇帝ボリス役にユダヤ系の声楽家マルク・レイゼンを起用しようとしたことが、スターリンの不興を買ったという説があります。実際には、ゴロワノフはレイゼンをボリス役に抜擢して録音を行ったものの、後にアレクサンドル・ピロゴフに替えて録り直しを余儀なくされました。

録音と作品

ゴロワノフは数多くの録音を残しており、その解釈は非常に個性的です。リストの交響詩集をはじめ、スクリャービンの交響曲全集とピアノ協奏曲、チャイコフスキーの《冬の日の幻想》と《悲愴》、リムスキー＝コルサコフの《シェヘラザード》や歌劇《サトコ》《クリスマス・イヴ》、ムソルグスキーの《展覧会の絵》、ベートーヴェンの《交響曲 第1番》《ヴァイオリン協奏曲》《三重協奏曲》、ラフマニノフの歌劇《アレコ》や交響曲《第2番》《第3番》、グラズノフの交響曲《第5番》《第6番》《第7番》など、幅広い作品を演奏しました。また、グリーグやモーツァルトの作品も録音しています。これらの音源から、ゴロワノフの演奏の特徴は、情熱的で激しい音色、力強く重厚な音響、そして柔軟なテンポとフレージングにあると言えるでしょう。

また、ゴロワノフは作曲家としても活動し、合唱曲を中心にいくつかの作品を残しています。初期には、ピアノ伴奏者としても活動していました。

家族

夫人はソプラノ歌手のアントニーナ・ネジダーノヴァです。

ゴロワノフの音楽は、彼の情熱と才能によって、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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