ニゴロブナ

ニゴロブナとは

ニゴロブナ（煮頃鮒、似五郎鮒とも）は、コイ目コイ科に属するフナの一種で、琵琶湖とその流入河川、用水路などに生息する日本固有の亜種です。学名はCarassius buergeri grandoculisまたはCarassius auratus grandoculisです。

成魚は全長35cm程度まで成長し、他のフナと比較して頭部が大きいのが特徴です。体高が低く、体長と体高の比率が約2.7倍と、比較的スマートな体型をしています。体幅は厚く、ナガブナ（諏訪湖産）に似ているとも言われています。

下あごが斜め上に向かって角ばっており、腹縁が角張っている点も、ニゴロブナを見分ける際の重要なポイントです。鰓耙数は61（52-72）、背鰭は1棘17（15-18）軟条、臀鰭は1棘5軟条を持っています。

生態

仔稚魚は琵琶湖のヨシ帯内部や水草が豊富な内湾に生息し、水面近くから中層を回遊します。成魚は夏場は浅瀬にいますが、冬場は深層に潜む傾向があります。

ニゴロブナの食性は、成長段階によって変化します。仔魚期には動物性プランクトンを主に捕食しますが、成長につれて藻類やワムシも食べるようになり、成魚になると半底生の動物プランクトンを主食とします。ただし、釣りの際には草食性のヘラブナ用の餌であるイモダンゴでも釣ることが可能です。幼生期にはミジンコ目、特にマルミジンコ属を好み、アサガオケンミジンコ属も捕食しますが、シカクミジンコ属はあまり捕食しないという偏食性も見られます。

繁殖期は4月から6月で、浅瀬や内湖のヨシ帯で、雨で水位が上がった際に水草に産卵します。孵化した稚魚は成長とともに沖合へ移動し、2～3年で成魚になります。

人間との関わり

ニゴロブナは、琵琶湖周辺地域において、滋賀県の郷土料理である鮒寿司の主要な原料として珍重されてきました。漁獲されたばかりのニゴロブナは、生食（刺身）やあら汁としても楽しまれています。

鮒寿司には本来ニゴロブナのみが使われていましたが、近年、漁獲量が激減したため、ゲンゴロウブナが代用されることがあります。しかし、ニゴロブナを使った鮒寿司は、骨まで柔らかく仕上がるため、特に評価が高いです。また、ギンブナが代用されることもあります。

漁業規制と生息数の減少

ニゴロブナの年間漁獲量は、1965年には約500トンと推定されていましたが、1989年には178トン、1997年には18トンと激減しました。このため、水産試験場では稚魚の種苗を確保し、水田などから琵琶湖水系へ放流する試みが実施されています。近年では、埼玉県でも養殖されているという情報もあります。

滋賀県では、ニゴロブナ資源回復計画に基づき、2007年4月1日から全長22cm以下の個体の漁獲を禁止しています。さらに、漁業者の自主規制により、6月から12月までの採取を自粛しています。将来的には漁獲禁止のサイズを全長25cm以下に引き上げることも検討されています。また、有害外来種の駆除や産卵場所の回復も重要な課題となっています。

ニゴロブナの生息数が減少した主な要因としては、開発や工事による産卵場所の減少、外来魚の影響が挙げられます。特にブラックバスやブルーギルなどの外来魚による捕食は深刻な問題ですが、根本的な要因というより、生息数減少を加速させる二次的な要素と見られています。かつてニゴロブナが産卵していたヨシ帯の多くは、湖岸堤の建設により失われ、内湖も水田化や干拓によって減少しました。また、水田への移動も水門建設や圃場整備により阻害されており、これらの要因が複合的に絡み合い、ニゴロブナの生息数を減少させていると考えられます。

まとめ

ニゴロブナは、琵琶湖の生態系において重要な役割を果たしているだけでなく、地域の食文化を支える貴重な資源です。しかし、近年は生息数が激減しており、早急な保護対策が必要です。生態系保護のための取り組みと、伝統食文化を守るための持続可能な漁業の両立が求められています。

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